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価値観、ビジョンの共有が
クリエイティブ人材を惹きつける

業界を牽引するビジュアルコンテンツ・エージェンシー

[Getty Images]Seattle, USA

  • 優秀なエンジニア、クリエイターを惹きつけ続ける
  • 企業の持つ価値観を“イメージ”にして伝える
  • 業界内でもリテンションが成功した企業に

いまや広告や雑誌、テレビなどの各種コンテンツ作りに欠かせない存在となったビジュアルコンテンツ・エージェンシー。自分たちで撮るには時間や予算がない会社にとって、クオリティの高い写真や動画を素早く、適正な価格で手に入れられることは非常にありがたいことだ。特に写真のフィルムからデジタルへの流れが飛躍的に進んだ近年、クリエイティブ業界におけるビジュアルコンテンツ・エージェンシーの存在感は高まり続けている。

数あるビジュアルコンテンツ・エージェンシーの中で、2015年に創立20周年を迎えたゲッティイメージズは、いまや業界最大手の1社として活躍を続けている。そんな同社がシアトルを拠点に選んだのはなぜなのだろう。4年前に建てられた現在のオフィスの構築にも関わったHR部門のバイス・プレジデントであるアン・ハッチャー氏(以下、アン氏)はこのように語っている。

「最大の理由は、ここシアトルがテクノロジーの集積地であるということですね。MicrosoftやAmazon、Googleといったテクノロジー関連企業が軒を連ねており、優秀なエンジニアを惹きつける大きな可能性があるのです。本社機能は一部ニューヨークにありますが、基本的にはシアトルオフィスが我々の本社です」

激戦区、シアトルにおいてリテンションに成功

もちろん、そのような魅力的な場所だからこその課題もある。「優秀な人材が世界中からシアトルにやってきます。しかし、シアトルには先程申し上げたようなメジャーな企業がたくさんあります。ですから、才能溢れる方々に対し、私たちゲッティイメージズが他社とどう違うのかをアピールし、私たちのストーリーをどう理解してもらえるかに心を砕かなければなりません」(アン氏)

しかし実際は、ゲッティイメージズはリテンションに成功している企業のひとつである。「年に一度、会社のマネジメント層が世界中から集まる機会があるのですが、その全員が勤続10年を超えています」と自身も勤続15年を超えるアン氏が言う通りだ。業界の変化が激しかったということもあるだろうが、「私自身の経験で言えば、この15年間で3社違う会社で働いたような感じです」(アン氏)。転職をしようと考えるよりも、ゲッティイメージズの社内で次にどんな新しいことをやってやろうかと考える社員のほうが多いのだという。


シアトルオフィスの外観。

創立: 1995年
社員数: 約1800人(シアトルオフィスには527人)

http://www.gettyimages.co.jp


ゲッティイメージズのアン・ハッチャー氏。

  • 壁一面が向日葵の美しい写真で埋め尽くされた会議室。

  • オープンスペース。中央に見える木のようなオブジェクトは、その名も「パワーツリー」。ケーブル類が全て天井に配置されているという点を逆手に取った装飾だ。

  • セミクローズスペース。何本ものロープを天井から吊し、パーティション代わりにしている。

  • エントランスの様子。キッチンやイベント機能を備えたスペースがあり、こうしたところでもブランド発信を行っている。

社員それぞれが「何をすべきか」を
明確に理解している集団

その秘密は、マネジメント層がコミュニケーション能力に長けているからだとアン氏は続ける。「ゲッティイメージズでは常にキー・イニシアチブ(Key Initiative)が掲げられているので、約1800人の社員それぞれが何を達成すべか明確にわかっています」。キー・イニシアチブはポスターとして社内に掲示されたり、メールで繰り返し社員に送られる。加えて、最終的なゴールのみならず、それを分解した細かなゴールも設定することで、社員それぞれがキー・イニシアチブを理解するための機会を増やしているのである。

いざオフィスを歩いてみると、至るところに大型のスクリーンがあり、そこにはさまざまな写真が映し出されている。それだけでなく、オフィスの天井やエレベーターホールの壁、トイレの壁にも……と、どこを見ても写真ばかり。ゲッティイメージズが「ビジュアルコンテンツを扱う会社」であるということを社内はもちろん、社外からの訪問者にも強く印象づけるための工夫なのだそうだ。自社の価値観を共有できていることもリテンションの強化に役立っているのだろう。

社員のさまざまな働き方を実現したいという目的で作られたオフィスは、社員にとって居心地のいい場所になっている。「オープンスペースで働くと同時に、プライベートのスペースもある。簡単に言うとそのような感じでしょうか」(アン氏)。デスクは丸形にし、ほかの社員が立ち寄りやすい雰囲気になっている。加えて、デスク脇にベンチを、オフィスの隅にソファを配置することで、手軽なコラボレーションを増やす工夫がなされているのだ。「そのために、必要以上の数の会議室は設けませんでした。日常の業務をしながら、ちょっとした時にソファに腰掛けて誰かと話ができるというのは、素晴らしい働き方ですよね」(アン氏)。

働く場所を自由に選べるオフィス

ゲッティイメージズの所有するブランドには、「Getty Images」と「iStock by Getty Images」の2つがある。実力ある商業フォトグラファーの作品を有する前者に対し、後者はまだ世に出ていない写真家やイラストレーター、映像作家の作品がほとんど。とはいえ、iStockには才能豊かなフォトグラファーが多く、いずれも非常にアクティブで生産的だという。そんな2つのブランドの両方にシニアアートディレクターという立場で関わるウィリアム・ボン氏(以下、ウィリアム氏)も、ゲッティイメージズでの仕事に満足感を抱いている一人である。

「私はニューヨークのオフィスから転勤になったばかりなので、このオフィスでは、まだ実は1年くらいしか働いていないんです。でも、シアトルオフィスは素晴らしいですね。これまでいろいろな会社を見てきましたが、中には社員が狭い空間の中で働かされているようなオフィスや、何もインスピレーションを感じないオフィス、色使いのよくないオフィスもありました。このオフィスは非常に働きやすいですよ」(ボン氏)

オフィスの立地も満足度が高い理由の一つ

数多くのフォトグラファー、ビデオグラファーと組み、彼らとの間でイメージを膨らませ、作品に落とし込むというクリエイティブな仕事に就いているボン氏にとっては、シアトルオフィスはとても魅力的な空間に写っているようだ。立ち上がって歩けばすぐに誰かと話ができるということを彼は重視している。「何でもかんでもメールなどでやり取りを済ませる人がいますが、私に言わせれば、face to faceで話をしたほうがずっと効率的です」と彼が言うように、オープンスペースが充実しているところが特に気に入っているそうだ。

オフィスの立地についてもボン氏は高く評価している。「駅の真上にあるのでアクセスは良好です。ここからならポートランドやバンクーバーにも2〜3時間で行けますから、とても便利ですよ。周囲には商業施設やスタジアムもある。アメリカンフットボールやサッカーを観るにはとてもいい環境ですよね」。オフィスのみならず、周辺の環境やその立地も、彼のようなクリエイティブな人材を惹きつけてやまない魅力のようだ。

前出のアン氏によると、ゲッティイメージズの今後の課題は「市場や消費者が欲するものの変化や、テクノロジーの変化に素早く対応すること」だそうだ。ビジュアルコンテンツ・エージェンシー業界では、ビジネスモデルが常に変化しているだけでなく、競合他社も数多く生まれてきている。業界大手として価値あるコンテンツをクライアントに提案し続けられるようにならなくてはならない。「もちろん、クリエイターの存在や知的財産を守らなくてはならないのは大前提としてあります。その上で、ゲッティイメージズの美しい写真や動画を消費者があらゆるデバイスで消費できるビジネスを継続していくことが今後の目標ですね」とアン氏。創業20周年という節目をシアトルで迎えたゲッティイメージズの未来への期待感は高まるばかりだ。

コンサルティング(ワークスタイル): Blue Bottle
インテリア設計: Blue Bottle

WEB限定コンテンツ
(2015.10.9 シアトルの同社オフィスで取材)

text: Yuki Miyamoto
photo: Kazuhiro Shiraishi


エレベーターホールもこの通り。さまざまな写真が見る人を楽しませてくれる。


ゲッティイメージズのウィリアム・ボン氏。


オフィスの壁には社員たち自らの手によるアートワークも展示されている。

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