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個の強みを最大限に活かし組織の“らしさ”を磨く

北欧から世界へ進出する新進気鋭の建築デザイン企業

[BIG]Copenhagen, Denmark

  • 個々の才能を活かしつつ、組織としての個性を保つ
  • スタディ中の模型やお互いの活動状況がすべて見える環境を実現
  • ヒトのインサイトを突いたユニークな建築で話題に

コペンハーゲンとニューヨークを拠点にしながら、注目度の高い国際プロジェクトを次々に手がけ、建築デザイン界の超新星的な存在となっているBIG(ビャルケ・インゲルス・グループ)。2005年に会社が設立された当初は、デンマーク国内での仕事が中心だったが、その後、ヨーロッパ、北アメリカ、アジア、中東にも、急速に活躍の場を広げていった。

アイデアの質だけが問われるフラットなモノ作り集団

BIGを率いるビャルケ・インゲルス氏は、1974年生まれの38歳という若さながら、輝かしい受賞歴を持ち、ハーバード大学、イェール大学、コロンビア大学などでのレクチャーも行うカリスマ的な建築家だ。しかし、世界の多様な都市で、それぞれの環境やニーズに応えながら同時並行的に建築デザインを行おうとするとき、1人の天才に依存する組織では限界がある。かといって、各プロジェクトを担当する建築家の個性に委ねるだけでは、組織ならではの個性が形成されていかない。

だがBIGは、こうした問題に行き当たることなく、急成長を続けてきた。その背景には、世界中から集まっている優れた社員たちによる「チームでの思考」と「ビジョンの共有」がある。

「BIGはあまり上下関係がない会社だと思います」と語るのは、パートナーの1人である建築家のヤコブ・ランゲ氏。ビャルケ氏と長年コラボレートしてきたパートナーたちは「どうすれば成功しやすいか」ということについて、より多くの経験知を持っているが、だからといって彼らのアイデアが特別扱いされるということはない。「プロジェクトごとに、担当するチームのメンバーから膨大なデザイン・アイデアが出されますが、その採用基準として重視されるのは、誰がアイデアを出したのかではなく、あくまで質。インターンであろうと、すばらしいアイデアを思いつけば、もちろん採用されます」(ランゲ氏)。

特定の個人を離れたアイデアたちは、何次にもわたるデザイン会議を経て、淘汰され、進化していく。100個のアイデアが10個に、それがさらに3個に…という風に絞り込まれていくだけではない。試行錯誤の中で、1つのデザイン・アイデアが2つに分かれたり、美しさに優れているデザインと機能面で優れているデザインが掛け合わされて変種が生まれたりもする。「私たちのアプローチを図式化すると、ダーウィンが示した『進化の系統樹』ようになると思います。最終的には、そのプロジェクトに適したもっとも強いアイデアが生き残るのです」(ランゲ氏)。

創業:2005年
従業員数:約110人

BIG(BJARKE INGELS GROUP)は、コペンハーゲンに本社を持ち、ニューヨーク、中国にオフィスを展開する建築デザイン企業。社会、経済、環境面でのバランスを重視した提案で世界各地に実績を残す。従業員は、25カ国から人材が集まるインターナショナルな職場である。

ボードやモックを挟んだ打ち合わせがいたるところで行われている。社内の公用語は英語。デンマーク語を話せないスタッフも多いという。

ヤコブ・ランゲ
Jakob Lange
アーキテクト/パートナー

ダリア・パホータ
Daria Pahota
広報

  • 元工場だったオフィスは仕切りがなく、広々としている。手前の棚は、資料模型や文献などがまとめられたライブラリ。

  • 模型を制作するスペース。大きなカニの足のような設備は、紙粉やくずを吸引する掃除機。

  • クローズドなミーティングルームも用意されているが、ガラス張り。社員のつながりを意識したレイアウトになっている。

  • 2.5mほどもある巨大な建築模型が置かれていた。奥の梁にぶら下がっているのは、工場時代に使われていたクレーン。インテリアとして残したという。

オフィスの主要な条件は
「大きな模型を置けること」

デザイン会議などの場で、メンバーたちの共通言語として活躍するのはモデル(模型)だ。デジタル・ネイティブ世代が多いBIGの建築家たちは、スケッチの段階から紙を使わずに、パソコンで行う。アイデアをCADで図面化したら、3Dプリンターを使ってすぐにモデルを作る。

三次元の建築デザインは、紙や画面で見るだけでは分かりにくいこともあるが、実物があれば話は早い。「アイデアを練る段階ではいろいろな問題が出てきますが、モデルを作りながら解決法を探していきます」とヤコブ氏。作られたモデルは、基本的にすべて保管される。

昨年、コペンハーゲンのオフィスを移転させたのも「より大きなモデルを作ること」が主目的だった。以前はビール瓶の工場だったという現オフィスは、天井がとても高く、スペースも広大だ。その中には、現在ニューヨークで建設中のスカイスクレイパーのモデルや、デンマークのビルンで建設中の「レゴ博物館」のモデルなど、高さ2m以上もあるようなモデルも展示されているが、そのために狭く感じるということはまったくない。

オフィスに仕切り壁をほとんど設けなかったのは、社員たちがスムーズに交流しやすいようにするための配慮だ。また、窓が大きく、広々としているオフィスに移転したことは、結果的に「そこで働く人々のモチベーションやインスピレーションにも良い影響をもたらした」という。

BIGでは「環境保護」と「快楽」は矛盾しない

「まだ会社の規模が小さかった頃、ビャルケは社員たちに自らのビジョンを繰り返し説明していました」。広報担当のダリア・パホータ氏はそう回想する。それらのビジョンは、創業メンバーたちの口から新しい仲間にも伝えられていき、現在は全社員が共有するものになっている。

BIGの建築を読み解くキーワードとしてよく用いられる「ヘドニスティック・サスティナビリティ」もその一つだ。環境や資源を保護するために、何かを規制したり、我慢したりするイメージを伴いがちなサスティナビリティ(持続可能性)という言葉に、ヘドニスティック(快楽主義的)という言葉を組み合わせたのは、「楽しくなければ、人々は何も続けられない」という考えから。こうしたビジョンをデザインで表現しようとすることが、BIGらしい独創性を生む原動力になっている。

例えば、「CO2の排出量を抑えるために、もっと自転車を活用しよう」と言うかわりに、車道から建物の10階まで自転車で上れるループつきのビルを建築した。また、BIGとして手がけた最初の仕事であるコペンハーゲン港のプロジェクトで、泳げる水浴場を設けたのは、海の水を綺麗に保とうとする意識を自然に育むためだ。この2つのアイデアを融合させた2010年の上海万博における「デンマーク館」は、BIGの名前とビジョンを世界に向けてアピールする大きな機会になった。

集中して作業をしたいときに利用できる模型制作室。作業スペースがゆったりとられている。

模型作りには欠かせない3Dプリンタ。この部屋は、模型の材料置き場にも使われている。

デンマークに本社を持つレゴ社から、レゴセンター(レゴブロックのテーマパーク)の建設を請け負っている(2016年完成予定)。オフィスには、レゴブロックにインスパイアされた多目的施設のイメージ模型が。

建物の2階部分。経営陣と管理部門のフロアとなっている。

オフィス全景。全体が一望できるほどオープンでフラットな空間だ。一画には、デスクや椅子をデザインする企業が入居しており、コラボレーションも盛んに行われている。

360°View

オフィス全景。全体が一望できるほどオープンでフラットな空間だ。一画には、デスクや椅子をデザインする企業が入居しており、コラボレーションも盛んに行われている。

※画像をタップすると360°スライド表示が見られます

ニューヨークのオフィスとは
24時間オンラインでつながる

社員がより快適に働ける環境を作り、コミュニケーションを促進していくことも、BIGが重んじてきた文化だ。コペンハーゲンのオフィスには開放的な食堂があり、ランチタイムになると、全員分の食事がケータリングで用意される。さらに「チーム・ディナー」と呼ばれるイベントがあり、月に一度は各プロジェクト・チームのメンバーが集まって、会社の予算で食事をしたり、遊んだりする。

ニューヨークのオフィスにいる社員とのコミュニケーションも、とても大切に考えられている。24時間稼働しているスカイプのスクリーンを通して、お互いの情報を交換したり、モデルを見せ合ったりするほか、リアルで交流することも少なくない。一昨年に研究目的の大規模な旅行で日本を訪れた際には、2つのオフィスのスタッフが東京と京都で合流できるように調整した。こうした細かい配慮の一つひとつが「チームでの思考」や「ビジョンの共有」を深めることにつながり、BIGの進化を後押ししていくのだ。

WEB限定コンテンツ
(2013.1.28 デンマーク コペンハーゲンのオフィスにて取材)

ランチタイムの風景。全社員の食事がケータリングで届けられる。同じ場所で同じものを食べることで、お互いの人間的な距離はぐっと縮まる。

壁に設置されたTV電話。ニューヨークのオフィスとはこのTVで24時間つながっている。

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