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ワークスタイル先進企業が取り組むオーストラリア随一の健康オフィス

歴史的遺産に新たな活気を吹き込んだ世界的投資銀行

[Macquarie Group]Sydney, Australia

  • 優秀な人材の確保とリテンション
  • 健康に配慮されたオフィス環境の構築
  • グローバルで初めてウェルビルディング・スタンダードのパイロットプロジェクトに認定

投資銀行マッコーリー・グループはワークプレイス変革の最先端をゆく企業だ。グローバル・ヘッド・オブ・ビジネスサービスのウィル・ウォーカー氏は、空間づくりの指針を次のように語る。

「ワークプレイスとは企業目標の達成や文化を発展させるためのツールです。ですから、社員がクライアントのために最高の結果を出せる環境を整えなければなりません」

実際、シドニーのシェリー・ストリートにあるリテール・バンキング部門のオフィスは、オーストラリア企業として黎明期にABWを導入したことで知られている。

2012年、同社はシドニーのオフィス街にグローバル・ヘッドクォーターの移転を決定。2014年に完成したその建物は、かつての世界最大の金融取引所を含むなど、オーストラリアの金融史に名を残す「50マーティン・プレイス」を購入、改修したものだ。


新たに設置されたガラスドーム型屋根。トップライトから自然光がたっぷり入り込む。

創業:1969年
売上高:約93億豪ドル(2015)
純利益:約16億豪ドル(2015)
従業員数:14,085人(2015)
http://www.macquarie.com

運動、食事、環境で
従業員の健康を促進する

改修にあたっては、社員たちのウェルビーイングとフレキシブルなワークスペースの確保に重きが置かれた。新たにガラスドームの屋根をかけ、建物内全域に自然光を当てる設計に。空気はエアコンからの再利用はせず、常に屋外から新鮮なものを取り込む。

建物中央のオレンジ色の階段、2階ごとに設置したキッチンアメニティは、社員の運動を喚起する狙い。加えて駐輪場、ヨガやバレエ、ピラティス等の運動ができる部屋に、ロッカーやシャワー室を完備している。

カフェで提供する野菜やフルーツは、現地で生産された安全・良質なものを揃えた。屋上テラスではミツバチを飼育しており、そこで採れた天然蜂蜜を使用したビスケットが好評だという。

「伝統を持ちながらも、もともと吹き抜けスペースがあるなど、フレキシブルでオープンな建物でした。我々のビジネスニーズに応えながら、オーストラリアの金融業界に新しい活気を与えることができて、光栄です」(ウォーカー氏)

最上階の来客エリアに設置されたラウンジ。ここで提供される食材に含まれる蜂蜜は、屋上で飼われているミツバチから採取したもの。

グローバルで初めて
ウェルビルディング・スタンダードの
パイロットプロジェクトに認定

ウェルビルディング・スタンダードとは、ウェルビーイング(満足できる生活状態・幸福度)の向上を目的に、2014年10月からアメリカで始まった注目される新認証制度。大きく下記に示す7つの概念に分類され、102の要素で認証が判断される。

Air(空気):最適な室内空気の質を提供するために、空気中の汚染物質を除去、など。Water(水):最適な水質を提供するためのろ過、汚染物質を除去、など。Nourishment(栄養・滋養):健康食品にアクセスできる設計上の特徴、健康的な食習慣を促す施策、など。

Light(照明):業務に応じた照明レベルと品質を担保する設計がなされているか。窓の性能、デザイン、出力、制御、など。適切な光を通じて睡眠、エネルギー、気分、生産性の向上に寄与しているか。Fitness(運動):運動を奨励するための設計が考えられているか。各種運動の機会が数多くあるか。

Comfort(快適性):邪魔の入らない、生産的な、室内環境が形成されているか。音、温度への配慮、など。Mind(心):心理状態の健康をサポートする配慮がされているか。デザイン的要素による配慮、リラクゼーションスペース、最先端の技術によるサポート、など。

2015年より教育プログラム、出版物などが順次提供されており、ロサンゼルスにあるCBRE本社、上海にあるヘイワースのオフィス、そしてこのマッコーリーの50マーティン・プレイスがパイロットケースとして認定されている。

コンサルティング(ワークスタイル):非公開
インテリア設計:非公開
建築設計:非公開

WORKSIGHT 08(2015.10)より

text: Yusuke Higashi

入居に際し、大理石のロビーと円柱など歴史的遺産の多くを補修・復元した。

建物中央の吹き抜けに新設した階段が、各階をつなぐ。社員の運動を喚起するのが狙い。

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