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アイデアをすぐに具現化する
グリーンな基地

リ・ブランディングを進めるカナダ最大のアウトドアショップ

[MEC]Vancouver, Canada

  • 都市化するアウトドアビジネスにどうキャッチアップするか
  • すべての価値創造を生み出す基地としての場
  • オリジナリティのある製品を生む下地が整う

カナダ最大のアウトドアショップMEC(Mountain Equipment Co-op)は、その名の通り生協の形態をとっており、会員数は430万人以上。カナダ内に18の店舗を構える。オリジナルブランドは3分の1ほど、バックパック、テント、寝袋、アパレル、そして自転車が主力製品だ。「MECは子ども用の服がとても強い。お買い得ですよ」と同社広報マネジャーのティム・サウザム氏は語る。

オフィスにおいては「グリーンビルディング(環境配慮型建物)」を実践してきたが、これはアウトドアショップとしてのコアバリューを体現するもの。グリーンビルディングの認証プログラムLEEDを取得したビルを7つ保有しており、この本社ビルもビルの構造、デザイン、機能全て環境負荷を軽減し、そこで働くワーカーの健康を改善するよう設計された。

部材を多く要するにもかかわらず2つの棟が45度の角度で交わる構造にしたのにも理由がある。窓は床板に対し高い位置に配され、ビルの幅は窓からの太陽光が中心部にまで届く範囲に収められている。

グリーンでありながらクールなスペースを作る

これらは全て年間通して自然光を最大限取り込み社員の健康とアウトドアブランドとして自然を感じさせるための配慮だ。ふんだんに活用されている木材はすべて地元ブリティッシュコロンビア州で生産されたもの。空間あたりの木材使用量は州内の建物のなかでもトップである。空調には輻射式を採用、省エネルギーと快適性を両立させた。

立地はバンクーバーの中心部、交通の便が良く、およそ100名の社員が自転車通勤を選ぶ。「過去7つのLEED認証ビルを経て、社員たちもグリーンビルディングが持つ可能性を深く理解しています」とサウザム氏。

「ですがビジネスにおいては、グリーンでありながらクールなスペースを作ることが重要になります。健康的なワークプレイスであると同時に、アウトドア用品メーカーとしてのブランドを体現したい。また新たなブランド形成のため、特に若い世代にアクティブになってもらいたいと考えています」


オフィス内の中央階段。最上階がキッチンになっており、社内で最も人が行き来する場所の1つ。本社の中心となる部分で、組織のアクティビティを刺激するのが目的だ。

創業:1971年
売上高:約3億3600万カナダドル(2014年)
当期剰余金:139万4000カナダドル(2014年)
従業員数: 1936人(2014年)
http://www.mec.ca


広報マネジャー
ティム・サウザム

  • 写真左は各プロダクトマネジャー用の個室。それぞれ担当するバックパックやバイク用品などが詰め込まれている。右はチーム毎にスタッフが働いているオープンスペース。

  • プロトタイピング・ラボ。試作に必要な素材が常備され、アイデアをすぐに形にして検証できる。

  • オフィス内にテントが。社員は製品のテストをすると共に、自社製品を無料でレンタルできる。

  • こちらのテストラボは繊維エンジニアリングのためのもの。様々な種類の生地サンプルが所狭しと並んでいる。

  • ウェブサイトに載せる写真や動画を撮影するための自社スタジオ。

  • プロトタイピングについてディスカッションを行うオープンエリア。周囲にも白熱した議論の雰囲気が伝わってくる。

ブランドが体現すべき価値を
リマインドする仕掛け

これにはアウトドアビジネスの環境変化を背景とした思惑がある。以前はアウトドアレクリエーションというとハイキングや登山が中心。サイクリングやウォーキング、フィットネス、ヨガなど都市型アクティビティが登場したのはこの10年のこと。

同社がサポートするアクティビティは格段に増した。これを受け同社はリ・ブランディングを決定、ロゴの変更など外部向けリ・デザインを終えると一昨年からは組織改変に着手した。

ブリングイット・プログラムはその一環だ。「毎日何か“よかったこと”を持ってくるように(bring it)」と社員に呼びかけている。全てのミーティングルームの壁にステートメントを掲げたのも社員のアイデアから。「アウトドアの楽しみ」「グループで何かやる楽しみ」など、ブランドが体現すべき価値をリマインドする仕掛けだ。

社屋には製品開発に必要な機能を全て埋めこみ、都市化するアウトドアビジネスにキャッチアップする。たとえばすぐにアイデアを形にするプロトタイピング・ラボ。素材の強度や防水性などを調べるテストラボ。ヨガやウェイトトレーニングなどのアクティビティに使える多目的ルーム。ここでプロのアスリートやアウトドアファンたちに製品をテストしてもらいフィードバックを得ているという。「以前のオフィスにも同じ設備はありましたがもっともっと小さかった」とサウザム氏。


「1%フォーザプラネット」を案内するボード。スノースポーツや海の保全を行う組織などに助成金を集める活動に参加している。

  • ワークフロアの様子。1人ずつブース席が与えられている。

  • 最上階にあるキッチン。あえて最上階に置くことで階段の利用を促す狙いもある。オフィス周辺には食事ができる場所が少ないため、ランチ時には社員が一堂に会する。

  • 屋上のBBQスペース。ここでも自社製品を試用している。

  • 多目的ルーム。社員はランチタイムを早々に終えて、ウェイトトレーニングやヨガに励む。

  • MECの創業者はクライマーだったこともあり、社内に本格的なボルダリングルームがある。ボルダリングはトロントで大人気のため、関連商品に力を入れている。

  • 道を挟んだ社屋の目の前には大きな公園が。昼休みになると社員たちはヨガやランニングなど身体を動かしにいく。この公園の存在も移転場所の決め手の1つだ。

「作る、試す、発信する」
製品開発機能を1カ所に

EDP(Equipment Demonstration Program)と呼ばれる倉庫にはキャンプ製品、パドリング製品など様々なデモ用製品が並べられ、社員に無料で貸し出されている。屋上庭園ではミーティングも兼ねたバーベキューを楽しむ社員も多い。フォトルームはウェブサイトに掲載する静止画と映像を制作するところ。こうして「製品を作る、試す、発信する」全ての機能がまとめられた。

ボルダリングルームでは休憩中の社員たちが汗を流していた。創業者がクライマーであることから今でもクライミングはMECにとって大きな要素。売り上げは堅実で、社内にもクライマーが多い。

製品開発はチームワーク、コラボレーションによって成し遂げられる。「ビルのデザインも、それを促すようなものを目指しています」とサウザム氏。製造チームに限っても、プロダクトマネジャー、デザイナー、素材のスペシャリスト等が関わる。

キッチンで促進されるプロ同士のコラボ

またマーケティングチームではライター、写真家、アートディレクター等が協働。コラボなしには何事も立ちゆかない。各プロダクトのマネジャーのみ個室が与えられているが、他はオープンスペースで働く。最上階に大きなキッチンを置いたのもコラボレーション促進の意図がある。

「このビル内には約400人が働いていますが、周囲にはカフェもなく、基本的に皆自分で食事を用意しているんです。大きな冷蔵庫に、電子レンジも10個あります」(サウザム氏)

会社としてどのNGOをサポートするかも従業員を含んだ委員会で決める。「1%フォーザプラネットというプログラムがあり、MECやパタゴニアもそのメンバー。寄付に力を入れていて、毎年売上げの1%を寄付に回しています。昨年の当社は325万カナダドルでした」とサウザム氏。もう10年前の会社とは違う、と同氏は言う。「オリジナリティある製品を生み出す下地が整った」との自負をのぞかせた。

コンサルティング(ワークスタイル): Proscenium Architecture + Interiorsと MEC、Brooks Corning
インテリア設計: Proscenium Architecture + Interiors
建築設計: Proscenium Architecture + Interiors

text: Yusuke Higashi
photo: Kazuhiro Shiraishi

WORKSIGHT 09(2016.4)より


EDP(Equipment Demonstration Program)と呼ばれる地下倉庫。自社製品を社員に無料で貸し出し、テストしている。


地下の駐輪場。およそ100名の社員が自転車通勤をしている

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