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アートとテックで人とアイデアをつなぐ、
ベルリン最大のテックフェスティバル

[Tech Open Air]Berlin, Germany

2016年7月11日〜14日。旧東ベルリンのターミナル駅だったオストクロイツ駅からさらに東に数キロ離れた重厚な建物は、何千もの人で溢れかえっていた。そこは旧東ベルリン時代に公共ラジオ放送局として使用されていた「Funkhaus」。現在も充実した音響システムを持つことから音楽イベントがたびたび開催されるその空間に、テックとアートに情熱を持つ人々が世界中から集結した。TOA(トア)の愛称で親しまれるベルリン最大のアート・テックフェスティバル「Tech Open Air」に参加するためだ。

TOAは2012年に始まり、毎年この時期に開催される。「Open Air」の名の通り、屋外にもステージやブースが設置され、自然あふれる空間でフェスティバルが開催される。そんなTOAは2016年に5回目を迎えた。ベルリンのスタートアップシーンへの注目度が高まるとともに参加者が急増し、2012年は参加者が600人だったが、2016年には1万1000名まで拡大、2017年は2万名を予定している。今回は新たにFunkhausが会場に選ばれ、ベルリンを東西に貫くシュプレー川沿いを特別に準備されたフェリーが行き来して、参加者を最寄り駅から会場に運んでくる。

世界各地でスタートアップの成長が注目を集め、何十億という大型の資金調達を遂げるスタートアップが生まれる中で、起業家と投資家、企業担当者をマッチングするイベントもここ数年盛り上がっている。こうしたイベントの主な目的が「利害の一致するもの同士をマッチングすること」にシフトしつつある一方で、TOAはビジネスだけでなくアートの要素も取り入れていること、そしてオープンなプラットフォームとしての場を提供しているのが特徴的だ。

「テクノロジーを中心に据えつつ、インターディシプリナリーなさまざまな業界の人が集まる場所にしたかった」と、2012年にTOAをクラウドファンディングキャンペーンから立ち上げたファウンダーのニコラス・ヴォイスニク氏は説明する。

確かにTOAのプログラムの内容を見れば、そのテーマは多岐にわたることがわかる。たとえば2016年のTOAで最も観客の注目を集めていたのは、「セックステック」に取り組む起業家シンディ・ギャロップ氏のトークだ。大勢の観客が収容人数最大のメインルームに詰めかけた中、ギャロップ氏は壇上で熱弁を振るう。「ステレオタイプから解放されているベルリンはセックステックの分野で起業家や投資家を惹きつけるハブ都市になれるはずです!」。場所によっては物議を醸しかねないテーマも、TOAの参加者には好評だ。

マットレス販売の米国のスタートアップCasperは、木からマットレスを吊るして参加者に自由に使ってもらっていた。

フードデリバリースタートアップの大手Delivery Heroが開催したサテライトイベント、チャットボットづくりの勉強会。

注目を集めた、シンディ・ギャロップ氏による「セックステック」をテーマにしたトーク。急遽屋外にも視聴スペースが設置された。

屋外にもブースやステージが設置され、参加者は屋内と屋外を自由に行き来する。開放感のある空間で新たな出会いが生まれる。

ベルリン各地で開催される
サテライトイベントにも注目

会場内では、アーティストをフィーチャーするエリアも設けられている。たとえば、ニューヨークとベルリンのチーム4名で活動するアート集団のyaq.computer は、人工知能を使った画像生成システムが、画家にどのようなインスピレーションを与えるかを探る実験的なインスタレーションをしていた。

機械学習や人工知能に関するトーク、成長中のスタートアップのファウンダーによるトークといった通常のスタートアップ関連イベントが扱うようなさまざまなテーマも扱われるのと同時に、こうしたメディアでは積極的に語られないようなテーマも組み込まれているのがTOAの特徴だろう。「グーグルにひっかからないような情報、ユニークな情報をイベントで発信したいんです」とニコラス氏は言う。そして、インターディシプリナリーであることは、アーティストやクリエイター、起業家など多様な人材が世界各地から集まるベルリンという街の性格を反映してもいる。

TOAのもう1つの特色は、メインイベントとサテライトイベントの2つのフォーマットで構成されている点だ。Funkhausはメイン会場で、ここで終日2日間のメインイベントが開催される。そして、並行して3日間ベルリン各地で開催されるのがサテライトイベントだ。メインイベントは数百ユーロのチケットを購入する必要があるが、サテライトイベントは無料だ。

サテライトイベントに参加するのは主に成長中のスタートアップ企業である。たとえば、ドイツ最大のファッションeコマースのZalandoは、UXのケーススタディを中心とした学習会を開催。「外部のおもしろいスタートアップとつながる機会を増やしたかった」と同社の担当者は言う。

また、フードデリバリースタートアップのDelivery Heroは、チャットボットの作り方について勉強会を開催し、エンジニアたちを惹き付けていた。

このように、スタートアップやエンジニア、ユーザー、パートナーと出会う機会を自由に企画できるのがサテライトイベントの魅力だ。参加者にとっても人気のスタートアップを実際に見られる、社員とつながれる貴重な機会でもある。新たなアイデアやつながりを求める参加者が、ベルリン各地で出会い、新しい何かが生まれる。そんな場を提供してくれるのがTOAなのだ。

text: Yuki Sato
photo: Shinji Minegishi

WORKSIGHT 11(2017.4)より

屋外にもブースやステージが設置され、参加者は屋内と屋外を自由に行き来する。開放感のある空間で新たな出会いが生まれる。


シュプレー川沿いを特別に準備されたフェリーが朝夕行き来して、参加者を会場へと運ぶ。祝祭感を出す工夫が凝らされている。

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