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社員のストレスを軽減する
親しみやすいオフィス

シングテルのコールセンター

[Singtel Callcentre]Singapore

  • 離職率の低下とサービスレベルを向上させたい
  • 社員のエンゲージメントを上げる工夫
  • 暖かみと助け合いにあふれた職場へ変化

シングテルのワークスタイル変革はデジタル部門にとどまらない。コールセンター部門のオフィス環境も一新させた。

シンガポールでは一般的に、コールセンターの仕事は過酷で、地位の低い職とみられがちだ。まるで「工場のように効率重視の職場」がコールセンターの典型的なイメージ。また、時に理不尽とも言える顧客たちのクレームに対処しなければならないとあって、そこで働く社員たちは恒常的なストレス過多に苦しめられている。これを背景に、コールセンター業界の離職率は極めて高く、年100%。つまり毎年全社員が入れ替わっているのだ。

そこでシングテルが求めたのは、社員のストレスを軽減させ、より楽しく長く働き続けられる、新たなオフィス空間。コマーシャル・マネジャーのガブリエル・リム氏によれば、キーになるのは「コミュニケーションの進化」だった。

社員を指導ためのコーチングルーム改良に着手

「3カ月と持たない社員が多くいるなかで、なぜすぐに辞めてしまうのかと、私たちは分析しました。その結果わかったのは、給料の多寡や技能トレーニングの有無は、あまり関係がないということです。特に若い世代は職場における人間関係やソーシャルライフの充実を大切にしていました。だからこそ、彼らは誰かに叱られると、非常にネガティブに受け止め、ストレスを溜めてしまう」

若い世代の「コミュニケーションの進化」に対応して、社員たちを指導するために作ったのが「コーチングルーム」だ。既存のコーチングルームは窓がなく、壁に囲まれ閉塞感があったという。リム氏の言葉を借りるなら、「コーチングを受けるスタッフが、まるで罰を受けているように感じる空間」。そこで新たなコーチングルームは、ガラスの壁を取り入れて内外からの見通しが利くようデザインを一新した。

「コーチングは、社員を罰するためにするものではありません。しっかりコミュニケーションをとり、パフォーマンスを改善する手助けをするのが目的。それを、社員たちにわかってもらいたかったのです」(リム氏)

シングテルのコールセンターは、都心から車で30分ほど離れたセラングーン地区に位置する。周辺には企業の研究所、団地などが集積している。
http://singtel.com

社員を指導する際に用いられるスペース。かつてのコーチングルームは閉塞感があり社員にとってストレスフルな環境だった。新オフィスではガラスの壁を取り入れ、解放感のあるものとした。

  • 床面のペイントはF1サーキットがモチーフ。コースによって全てのエリアを連結しているイメージだ。

  • 社員たちのリラックススペースであるハドルエリア。ここは公園をモチーフに設計されている。

  • 同じくハドルエリア。こちらはビーチがモチーフになっている。多様な価値観を持つ社員のため、好みのスペースを選んで息抜きの時間を楽しめるようにした。

  • イージールームでの朝食会の様子。会社に対する愛着心(エンゲージメント)を高めるために、各チームで実施されている。

  • パントリー、コピー機などが集まったマグネットスペース。デザインテイストは人が集まる公園のイメージ。

社員たちのフィードバックを
最重視した空間デザイン

空間デザインはユーザーフィードバック、つまり社員たちの意見に基づいて行われた。効率重視のオフィスではなく少し変わったもの、たとえば「よりアクティブ、よりスポーティ」といった彼らの声を、外部のデザイナーが具体案に落とし込んだ。オフィス家具も、社員たちの投票により選ばれたものだ。

「私たち経営陣が、社員の意見に耳を傾けようとしているという、本気の姿勢を示したかったのです。それに、『自分もデザインのプロセスに参加している』と感じてもらいたかった。そう、自宅の家具を選ぶみたいに。そうすれば、職場に対して親しみを持てると思いました」

ここで働く社員は約500名。彼らがストレスから解放されるよう、遊び心溢れる空間が複数用意された。公園、ビーチ、リビングなどをモチーフにデザインされた共用スペース「ハドルエリア」では、一時仕事を忘れ、リラックスした表情の社員を見ることができる。

会社に対するエンゲージメントを育てたい

個人のデスク回りに目を転じると、テディベアや風船などでデコレーションが施されている。会社側がデスクを「パーソナライズ」するよう推奨しているのだ。これもまた、通常のコールセンターとは一線を画した、フレンドリーな居心地のよさをもたらしている。

会社に対する愛着心(エンゲージメント)を育てたいとの意図から、社を挙げてチームビルディングを後押ししているのも、同社ならではの施策だ。たとえば、ミーティングルームの名前を決定しようとチームごとに案を競わせたり、各マネジャーに予算を渡して朝食会やボーリング大会などのチームアクティビティを実施できるよう支援したり。

年度末になると各マネジャーは自分の部下たちから「チームをエンゲージさせているかどうか」評価を受けるのが決まりだ。ポイントが水準以上に達しなければ、上層部からの勧告を受けるというから、会社の本気度は間違いなく社員に伝わっているだろう。

ストレスレベルを改善するとミスも減る

デスクのレイアウトにも変更点があった。以前に比べてデスクを小さくし、隣人との距離を近くした。助けが必要となれば、チームリーダーがすぐにサポートに入れるようにした。結果、社員同士が「助け合う」頻度が高まった。

「もとより、コールセンターの仕事は、常に学んでいかなければいけません。1人の社員が顧客からの質問全てに応えるのはとても難しいからです。難しい顧客対応のケースがあれば、チーム内で共有するのが理想。助け合いの空気のおかげで、その理想にもっと近づけることでしょう」(リム氏)

「楽しい環境で働けたら、社員はよりよい顧客サービスを提供できるという効果も期待した」とリム氏は言う。実際、カスタマーエクスペリエンススコアは改善されているのだ。一方、「生産性」の明確な向上は今のところ確認できていない。リラックスタイムを長くとるよう奨励していることから、社員の単純な生産性はむしろ落ちている可能性が高いという。しかし、それはさして問題ではない。

「ストレスを感じる職場では、社員はミスを起こしやすい。これは確かです。顧客に誤った情報を伝えることもあれば、コールバックを忘れることもあります。しかし新オフィスになってからは、社員のストレスレベルが改善されたのでしょう、そういったミスが減ったと断言できます」(リム氏)

コンサルティング(ワークスタイル):自社
インテリア設計:SCA Design (a member of ONG & ONG Group)

WORKSIGHT 06(2014.10)より


シニア・コマーシャル・マネジャー
コンシューマー・オペレーションズ
ガブリエル・リム
Gabriel Lim/左

SCAデザイン
シニア・デザイナー
ロンメル・バルユット
Rommel Baluyut/右


新オフィスではチームメンバーどうしの距離が近づき、「助け合い」の空気が生まれている。


デスクの飾り付けをテーマに、チーム対抗で独創性を競い合う。経営陣が評価したチームには賞品が送られる。


共用スペースには自分や家族の写真を貼り、お互いのパーソナリティを知ることができる。チームの結束を固める秘訣だ。


チームごとにショートムービーを作成し、優秀な作品を表彰するイベントを開催している。写真は景品をルーレットで決めている様子。

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