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開かれた思考を見せあいアーティスティックな仕事を実現する

グローバルにインスタレーションを展開するクリエイティブ企業

[OBSCURA DIGITAL]San Francisco, California, USA

  • アーティステックで複合的な仕事ができる環境作り
  • お互いの様子が見えながら、集中しやすい空間を構築
  • クリエイティビティと技術力が高く評価され世界に展開

オブスキュラ・デジタルは、カーネギーホールやアブダビのモスク、ニューヨークのグッゲンハイム美術館など、世界中でインスタレーションを手がけてきた。シドニーのオペラハウスでコンサートのライトアップをしたときの映像は、YouTubeで公開されると4時間で3300万ヒットを記録した。

クリエイティブな社員がアイデアをすぐ試せる環境を重視

「仕事をアーティスティックに進めることがコアバリュー。技術だけでなく、音楽やアート出身の人が多く、どの社員も情熱を持って革新的な表現をしたいと考えている。個人的な人生の楽しみを仕事に持ち込むことを会社は推奨している」とCEOのクリス・レジュネ氏。

創業は2000年。デザインに強いレジュネ氏と技術に強いクリエイティブディレクターのトラヴィス・スレルケル氏が、お互いの強みを合わせることで意気投合した。最初のオフィスはサンフランシスコのサウスパークの3階建ての倉庫で、広いスペースを使って「作品をテストできる環境」にこだわった。

創業:2000年
売上高:非公開
純利益:非公開
従業員数:60人
様々なインスタレーションを提供するクリエイティブ・テクノロジー・ファームとして2000年に設立。オフィスは、サンフランシスコ近郊のドッグパッチにある。アーティストやクリエイターが集まる地域として有名な場所だ。

  • CEOなど経営陣には個室が割り当てられている。

  • 1階のオフィススペースには、経理といったバックオフィス部門やアシスタントがデスクを並べている。

  • エントランス近くのミーティングルーム。マネジメント層が地下、1Fを見渡せるように設計されている。

  • 2階はエンジニアたちの工房。作業に集中しやすいよう、あえて暗めの環境にした。

「開かれた思考」の空間が
異なる職種のコラボレーションを促す

考えをすぐ再現できることは、このオフィスでも継承されている。デスクでプログラミングしたデータを映し出せる施設があることで、クリエイティビティが刺激される。

当初はプロジェクターを使ってドームの内部を演出するサービスが中心だったが、次第に様々な製品開発も求められるようになり、2010年に現在の場所に移転。ここも前と同じく3階建ての倉庫を改装したものだが、新たに「Open Way of Thinking」(=開かれた思考)をコンセプトにした。以前に増して複合的なプロジェクトの受注があり、ストラテジスト、デザイナー、テクノロジストの3つの職種の連携が重要になっていたからだ。そこで、いっそうのコラボレーションを促進するようにデザインされている。

1階はエントランスを含むオープンスペースで、ガラス張りの会議室などでコラボレーションをはかれる。2階はエンジニアが落ち着いて作業をするスペースで、ガレージのような雰囲気でまとめた。地階は大きなスタジオになっていて、音響や映像の機材が並ぶ。巨大なドームもあり、本物と同じようにインスタレーションを上映できる。エンジニアはときにはデスクごと地階に移動し、作成したデータを実際に映し出したり、調整したりする。

地階と1階は吹き抜けになっているため、ガラス張りの会議室からスタジオの実験がよく見える。1階の廊下を歩くときも下で何が起きているのか、のぞき込むことができる。お互いに集中できる場所を持ちつつも、お互いの仕事内容がほかの社員の目に触れるしくみだ。

クリス・レジュネ
Chris Lejeune
Co-founder/ CEO
2000年、トラヴィス・スレルケルと共にオブスキュラ・デジタルを設立。COOを経て2011年より現職。

地階のドーム型スタジオ。ドーム内にインスタレーションをプロジェクションする装置で、製品開発の要になっている。手前のビリヤード台は「Cue Light」と呼ばれる商品。

2階の工房を見渡した様子。エンジニアチームが入居し、コンテンツ開発やソフトウエアのプログラミングなどを行っている。

360°View

2階の工房を見渡した様子。エンジニアチームが入居し、コンテンツ開発やソフトウエアのプログラミングなどを行っている。

※画像をタップすると360°スライド表示が見られます

世界にメッセージを発信する
独自プロジェクトで注目を集める

クライアントワークのほか、年に1、2個は世界に向けて大事なメッセージを発するプロジェクトを企画する。少し前にはCOP15でアート作品を展示した。利益のためではなく、社員が発信したいものを作ることも重要だと考えているからだ。この作品は評判となり、世界で何千という記事になって広まった。

アーティスティックに仕事をするために、引き受ける案件は厳選している。「最初から正しいプロジェクトを選ぶことが大事。退屈な案件を選んでしまったら、アウトプットの質は落ちるでしょう」とレジュネ氏はいう。

「世界にもっとインパクトを与えたい、人々を感動させるアイデアを伝えたい」という社員それぞれのモチベーションを後押しするしくみを作ることで、オブスキュラ・デジタルは革新的なインスタレーションを次々に打ち出す集団であり続けることに成功している。

WORKSIGHT 03(2012.11)より

シドニーのオペラハウスやサンフランシスコ交響楽団の、カーネギーホールでのイベントでは、大掛かりな3Dプロジェクションマッピングと音楽を連動させるなど、クリエイティビティと技術力が高く評価されている。現在はサンフランシスコの本社の他にニューヨーク、ヨーロッパにオフィスを構えており、現在はアジアや南米への進出に取り組んでいる。
ホームページでは、これまでの作品の多くを動画で紹介している。光と音楽が調和した大規模プロジェクションは幻想的。

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