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マンネリ、しらけを排除して競争力のある人と事業に投資する

Ameba事業が急拡大するインターネットポータル企業

[サイバーエージェント]渋谷区, 東京, 日本

  • 21世紀を代表する企業になる
  • 可能性のある人と事業に投資するためのしくみを作る
  • 毎年1200以上の新規事業案が生まれる会社に

渋谷マークシティに入っている一部の本社機能を除けば、サイバーエージェントの多くの事業部は、渋谷の街の雑居ビルに分散してオフィスを構えている。

毎月、新しい社員が平均50名、業務委託などを含めれば平均100名が入社しており、社員数は純増。とくにメディア系の部署では新規事業が多く、意図的に中型、小型のビルを選んでいる。

大きな空間に入れば、スペースの分だけ気持ちにもゆとりができる。だが、ベンチャーの場合はそれがプラスに働くわけでもない。実際、古い雑居ビルに入ることで「がぜん燃える」という社員も多い。

空間が人の気持ちを変え、空間が組織を作るという考え方から、事業モデルや事業の成長フェーズに合わせて、ビル選びやオフィスの設計を考える。躍進している事業になると、ビルのグレードやオフィスの内装はよくなる。そうした自然な変化が社員にとっての刺激になっている。

市場環境にあわせて臨機応変に動ける組織

内装はおおむねシンプルで無駄がない。それぞれの社員には、チームごとに自由に連結配置のできる120度テーブルが一つ与えられるだけで、キャビネットやワゴンは禁止。個人の荷物はロッカーに入る分しか持ち込めない。

オフィスの内装も作り込み過ぎないように心がけている。年間50~60回はある引っ越しやレイアウト変更に対応しやすくするためだ。

かつてはお金をかけて社員の希望を反映させていたこともあったが、完成した矢先に移らなければならないこともしばしば。市場環境が変化するなか、事業が成長フェーズに入れば人数を増やすことになるし、撤退フェーズに入ればその逆。組織はつねに変化するものと考えれば、臨機応変に動ける状態にしておくことが、一番重要なことだ。

人の出入りが激しい一方、コミュニケーションが起こりやすいように、新入社員のデスクには「ウェルカムバルーン」と呼ばれる風船がつけられたり、ちょっとしたことでも祝えるくす玉が常備されている。

部署ごとにポスターや張り紙を自由に作って掲示できるカルチャーで、壁や廊下、エレベーターホールにところ狭しと張られ、各部署の内なる活気を垣間見られる。

1995年、藤田晋氏らによって作られたIT企業。インターネット広告事業やメディア事業、投資育成事業など業態の幅を広げながら着実な成長を遂げている。

開業:1998年
売上高:約1200億円(2011年度)
純利益:約140億円(2011年度)
従業員数:1981人(2012年5月現在)
http://www.cyberagent.co.jp/

全社員に配られる冊子「マキシムズ」には会社の指針がつづられている。

社内の一角にくす玉。表彰式などで使われる。

  • 渋谷・道玄坂にあるサイバーエージェント・ビルのエントランス。同社の主力事業の一つ、アメーバ事業部が入っている。

  • アメーバピグは20~40代に人気のサービス。デスクまわりはトレンドを追いかける資料であふれ返っている。

  • 同社の特徴の一つが「ポスター文化」。事業部やチームごとにポスターを作り、社内に貼り出している。印刷代などすべて会社支給だ。

  • ところどころに浮かんでいる風船は、入社1カ月目の社員のデスクに付けられる「ウェルカムバルーン」。

「ジギョつく」や「あした会議」で
社内の優秀な人材を発掘する

経営陣が目指しているのは「しらけの排除」だ。人間が本質的に「飽きやすい生き物」だとすれば、マンネリの職場でモチベーション高く頑張れるはずがない。

業務の変化、組織の変化、上司の変化、働く仲間の変化、いろいろあるが、社員の気持ちがしらけるという状態をどれだけ排除できるかに大きな注意を払っている。

社員一人ひとりの気持ちがどうあるのか、それを知るために、8人すべての役員が週に2、3回は社員たちをランチもしくは飲みに誘う。たとえば単純計算で、ランチ2回、飲みに2回行ったとして、それぞれ5人の社員を誘ったならば、週に20人と接する。4週間続ければ月間で100人だ。それを8人の役員がやるとざっくり800人。年間では約1万人に達する。社員数をゆうに超える圧倒的な数字となる。

こうした社員の声のヒアリングと同時並行で、社員から事業アイデアを公募する「ジギョつく」や、各経営陣が新規事業案を公開プレゼンする「あした会議」、同じ部署に1年以上いると他部署に異動できる機会がある「キャリチャレ」を複線で用意。それ以外に、経営側からの提案で業務を変えるジョブローテーション(通称「ジョブロ」)も進める。

大企業になってもベンチャー精神を失わない会社

これらの根っこには「優秀な人材に伸びる事業を」という明確な指針がある。可能性のある人材、期待値の大きい人材には抜擢をしたり、思い切った人事をする。

その顕著な例が、「新卒社長」だ。新卒採用のメンバーに優秀な人材がいれば、子会社の経営陣へ抜擢する。20代で経営の経験をし、リーダーシップを取れば、成否にかかわらずいい成長機会になる。

現在34人もの新卒社長、新卒役員が誕生。今年も「My365」という、5カ月間で100万ダウンロードされたiPhoneのカメラアプリを作った内定者4人が、資本金5000万円の子会社としてスタートした。

サイバーエージェントにとって、グローバル展開は最大のチャレンジの一つだが、「海外に送り込むのはエース級の人材」と決めている。海外で戦うことは、国内とは比較にならないくらい難しい。一番優れた人材を選んだ結果、アメリカの現地法人の副社長には当時新卒入社7年目の20代の社員が抜擢された。

能力があれば、年齢も経験も関係なく機会が与えられる。組織の規模が大きくなってもベンチャースピリットそのままにチャレンジし続けられる会社だ。

WORKSIGHT 02(2012.6)より

「今回で16回目を迎える『ジギョつく』(事業を作るの意。社員から新規事業を公募する)も、第1回は応募数14件、第10回まで100件未満でした。そこで第11回から事務局を社内営業に行かせて、応募メリットを説明。応募者全員に8人の役員からフィードバックを受ける機会も設置。その上で、応募した社員が経営陣から抜擢される様子が噂になり、前回は1200件が集まりました。同様に、今回で6回目を迎える『あした会議』(会社の明日を考えるの意。8人の役員が事業案をプレゼンする)も、役員が優秀な社員をスカウトして一緒に進めるプロセスにより、社内の人材資源に詳しくなる。この2つが社内にいい刺激を与えています」 (取締役人事本部長・曽山さん)

 

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