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3つのCの実現を目指す
ダウンタウン再生プロジェクト

[Downtown Project]Las Vegas, USA

ダウンタウン地区はラスベガス発祥の地。現在の中心地「ストリップ」に人気を奪われ、よく言えば「古き良き街並み」が残るが、旧繁華街は治安が良いとは言えず、この数十年間はわずかな観光客を惹きつけるのみとなっている。

「ダウンタウンプロジェクト」はこの状況を改善すべく、地域再生の試みとして始まった事業だ。その額3億5000万ドル。これを不動産開発、スモールビジネスへの投資、テック企業への投資、教育への投資に配分している。コンセプトは3つのC。すなわちCollision(出会い)、Co-learning(学びあい)、Connectedness(結びつき)である。3Cを色濃く持つ施設を巡ってみよう。

2013年にオープンしたナインスブリッジスクールでは、乳児から小学校低学年までを対象としたアントレプレナー教育が行われている。創業者のコニー・イップ氏はNYの金融業界からこのプロジェクトを機に教育事業に飛び込んだ。

9th Bridge Schoolの外観。1階は幼児教育、2階は小学校。
http://9thbridgeschool.org

  • 9th Bridge Schoolの教室は席が決まっておらず、生徒の興味にあわせて学んでいくスタイル。教師たちは専門的な教育を受け、最低5年の教師経験をもつプロだ。またプロジェクトベースの教育に共感しているという点でも共通する。

  • 校舎は教会を改修したもの。多目的ホールにはその名残がある。

  • 校庭の壁は、地元の壁画家と生徒たちのコラボレーションにより描かれたもの

  • ユニークな授業のひとつに「tinker」がある。tinkerとは「バラバラにする」の意で、例えば小学生がコンピュータを分解して中を見るといった内容。「機械工学、エンジニアリングにつながる授業。これからもっとSTEAMにフォーカスしていきたい」(イップ氏)

子供が自ら学びを計画、実行、
再考する教育モデル

幼児教育では子供自らが計画、実行、再考する教育モデル「ハイスコープ」を採用、子供たちは興味の赴くままに学ぶことができる。小学校は多角的な思考を養うプロジェクトベースのSTEAM(Science, Technology, Engineering, Arts, Math)教育が売りの1つ。

例えば各自で探索したテーマの中に、物の上げ下ろしの方法について考えた生徒がいた。子供自らでリサーチをし、ダンボールやロープを使ってプロトタイプを製作した。エンジニアリング、数学、アート、コラボレーション、デザインシンキングなどの要素が盛り込まれた学習である。

親の関わりや、コミュニティとのパートナーシップも同校の特色だ。毎朝、子供と両親、学校スタッフが集まる会合を開き、つながり感を醸成。校舎を飛び出して街のなかで学ぶ生徒は、同校においてはよくある風景だ。

「先日はみんなで書店を訪れました。ダウンタウンには学ぶ機会がたくさんあります。その中で自分の情熱を見つけてほしい」(イップ氏)


ナインスブリッジスクール
ファウンダー
コニー・イップ

  • ダウンタウン・コンテナパークには、アクセラリー店やアパレルショップのほか、玩具店、ウェディング・チャペル、アメリカン・ウィスキー・バーなど様々な施設が入居する。

  • ファミリーフレンドリーな施設を志向しており、実際ベビーカーが1日何台来たかカウントしている。それぞれダウンタウンプロジェクトから投資を受けており、利益が出たビジネスはプロジェクトに初期投資を払い戻す。投資に利息は発生しない。

  • カジノつきの中規模ホテルをリニューアルしたゴールドスパイクと姉妹ホテルのゴールドスパイク・オアシス。無料のコワーキングスペースと2フロアの住居、同じ2フロアの宿泊施設からなる。

  • 住宅事情の悪いダウンタウンにおいて、住居とホテルはいずれも貴重。ホテルの客室全80室と全7室のスイートルームは、それぞれ異なるデザインになっている。

  • ザッポスをはじめコミュニティメンバーからの意見を反映し、様々な施設に投資されている。住環境としての機能を高めるためにスーパーマーケット、ドッグパーク、初期診療用の病院「ターンテーブル・ヘルス」などの設置も進んでいる。これまでのエンターテイメント中心の商業都市ラスベガスに、生活者のための街が生まれはじめている。

ダウンタウン地区の再生に
寄与する商業施設群

ダウンタウン・コンテナパークは、38のお店やレストランが入居するショッピングモールだ。「大人の街」ラスベガスに家族連れやカップルたちを呼び込む。出店しているのは大手チェーンではなくスモールビジネスが中心、それもほとんどが1号店である。コンテナパークはダウンタウン地区におけるインキュベーター的な役割も果たしているのだ。

「人が出会い、学び合い、つながるというダウンタウンプロジェクトを、まさに体現した場所だと思います」と語るのは、ダウンタウンプロジェクトの広報担当マリア・フェラン氏だ。さらにジェネラルマネジャー、キャロライン・モリアーティ氏は続ける。

「テナント同士で助け合うことができるよう努力しています。クラフト作りやコンサート、映画鑑賞会と、家族向けのイベントが多々ありますし、誰が隣に座るかわかりません。私自身、ここで働いていると知らなかった多くの友人に出会うのです」

ダウンタウンプロジェクトは現在4年目。このビジネスを持続可能なものにするべく収益化に注力しているところだ。この後も大きなプロジェクトが続くが、なかでもアパートの建設は意義深い。231の部屋を有し、それぞれ1〜3ベッドルームになる予定。

「ダウンタウンは住宅事情が悪く、高級すぎる物件か低所得者向けかのどちらかで、その中間にあたる物件がありません。アパートが完成し、住民が増えれば、私たちのビジネスを活性化することにもつながります。この街に住宅を供給できることを、嬉しく思います」(フェラン氏)

text: Yusuke Higashi
photo: Hirotaka Hashimoto

WORKSIGHT 10(2016.10)より


コンテナパーク
ジェネラルマネジャー
キャロライン・モリアーティ


ダウンタウンプロジェクト
広報担当
マリア・フェラン

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