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デザインシンキングに通じた
経営人材を育成する大学院

MBA×デザイン思考によるイノベーションの実践

[The University of Toronto Rotman DesignWorks & the Rotman School of Management]Toronto, Canada

  • 時代に即した問題解決できる人材を育成したい
  • ビジネスパーソンにデザインのスキルを身につけさせる
  • 世界初の「デザインシンキングを取り入れたMBA」として認知される

ロットマン・デザインワークスはトロント大学のマネジメントスクール。「MBAにデザインシンキングを導入する」という世界初の試みで脚光を浴びたことで知られる。創設者は経営学者ロジャー・マーティン氏。長年P&Gのコンサルティングを務めた人物だ。

経営にデザインシンキングを導入する手法が注目されて久しいが、いまなお発展途上の段階にある。マーティン氏は自らの経験を踏まえ、次のような確信を得た。

「そもそもビジネスパーソンはデザインを“理解する”必要はなかった。自らがデザイナーで“ある”べきだったのだ」。ロットマン・デザインワークスはその精神に基づいて生まれた。

2年間のカリキュラムのうち初年度は会計、戦略、ビジネスモデルなどMBAのコア科目を学ぶ。デザインシンキングはワークショップやプロジェクトを通して学ぶことになる。「スタディツアー」では選抜された学生がアメリカのデザインファームを訪問する。


ワークショップなどが実施される教室。フロアごとに異なるコンセプトでデザインされている。

創設:2005年
http://www.rotman.utoronto.ca

  • 建物内は「学生用スペース」「授業用スペース」「リサーチスペース」の3つに分類されている。写真は廊下に設けられた学生用ラウンジ。いたるところにワークスペースが用意されている。

  • 300人を収容可能なレクチャーホール。すべての授業はビデオ録画されている。教授の知的財産にあたるため、教授が望めば配信も可能。

  • 学生用のオープンスペースは常に人でにぎわう。大きめのソファでゆったりできる場所も多い。

  • レンガづくりの古い建物は、もともと100年以上前に建てられた教会。現在は博士課程に進んだ学生たちが研究室として使用している。

  • 屋上庭園を望むテラス。トロントの街並みを眺めながらリラックスできる場所だ。

  • カフェテリアでは新鮮な食材を使ったサラダやサンドイッチといった作りたての食事が提供される。ラップトップを開いて予復習をしている学生も多いという。

学びと実践を同時に積み上げられる
特徴的なカリキュラム

驚くべきはデザインに関する基礎知識は単位外の授業で自主的に学び、とくにデザインに情熱ある学生は「ビジネスデザインクラブ」に自主参加、デザインシンキングを実践する機会を積み上げている。

実際に企業からの依頼を受け、イノベーションの問題を解決する授業も。また同校が実施する「ロットマン・デザイン・チャレンジ」は企業から与えられた課題に対する解決策をプレゼンするというもの。優勝賞金2万カナダドル、世界中のビジネススクールが集まる国際デザインコンペだ。参加者の1人で同校ディレクターのマーク・レオン氏は次のように語る。

「私たちは不動産管理の会社についてのプロジェクトに取り組みました。他社との差別化が難しい業界ですが、ユーザーリサーチを通じ、引っ越してきた人にウェルカムメッセージを書いたり管理責任者と話せるホットラインを置いたりと“人間味ある関係づくり”が大切だとわかった。規制やルールに囚われて人間味を失っていた業界に、新しいアイデアをもたらすことができたんです」

5〜6年前まで、卒業生はみな大きなコンサルティング・ファームや銀行に転職していたとレオン氏は言う。「しかし近年はナイキ、グーグル、IDEOといった新しい会社が目立ちます。クリエイティブでありながらビジネスもできる人材を、彼らは探しているんです」

コンサルティング(ワークスタイル):非公開
インテリア設計:非公開
建築設計:KPMB Architects

text: Yusuke Higashi
photo: Kazuhiro Shiraishi

WORKSIGHT 09(2016.4)より


建物中央にのびる長い階段。各フロアをゆるやかにつないでいる。


ロットマン・デザインワークス ディレクター
マーク・レオン

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