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企業文化を復刻してベンチャースピリットを保つ

世界中の相手とP2P技術で通話できるソフトウェア企業

[SKYPE]Palo Alto, California, USA

  • チームでのスピーディな協業と個人が集中できる環境の両立
  • フロアを同心円状に区分し、空間ごとにオープンとクローズの役割をわける
  • 社員同士の交流が活発になり、仲間意識が向上

「Skype」は2003年にエストニア・タリンで生まれたインターネット通信サービスだ。P2P技術を使って全世界のユーザー同士が無料で通話できるメリットが支持され、短期間で成功を収めた。

その後、2005年にイーベイが買収。グローバルでは堅調な成長を続けながらもアメリカでは伸び悩み、2009年に売却される。そして、2011年に現在の親会社であるマイクロソフトからの買収を受け、同社の子会社として歩み始めた。

当初はマイクロソフトの資本が入ることで、同社のプラットフォームに縛られるのではないかという懸念があった。しかし、マルチプラットフォームで利用できる点は変わらず、むしろスカイプ創業時に近い自由度が復活した。

現在のオフィスに移転したのは2010年12月。イーベイと離れ、アメリカ市場での勢いが増し、当時65名の社員数で物件を探し始めていた。引っ越しが行われる段階では100名を超えるほど、急成長のフェーズだった。

木造建築の味わいを残しながら、最先端のテクノロジーを完備

スカイプ本来のカルチャーを再定義するために、デザインのコンセプトは「カリフォルニア・カジュアル」と「テクノロジー・コンテンポラリーズ」の融合を目指した。ビルは木造の古い建物を改装している。コンクリートではなく木で作られた良さから、通気性に優れ、密閉感が少ない。Wi-Fiの電波も外まで広く届く。ここで社員同士のオーガニックな関係性が育まれている。

スカイプには「Once a Skyper, Always a Skyper」という言葉がある。「一度スカイプの一員になったらいつでもスカイプの仲間」という意味だが、それだけ社員の製品への愛着が深い。

9年前の設立当初からずっと働いている社員もおり、定着率もかなりの高さを誇る。さらに退社した元社員とも継続的な付き合いが多く、会社というよりも、スカイプを通じたコミュニティが形成されている。

創業:2003年
売上高:非公開
純利益:非公開
従業員数:非公開

9万1000平方フィートの建物では、常時140~150人の社員が働いている。基本的には出社日などは決まっておらず、自宅で作業をしてもよいことになっている。1階にはファイナンスやPR、HR、マーケティング、セールス部門があり、2階はエンジニアとプロダクト関連の部門が入っている。
写真はパロアルト支社のエントランス。モニタでは、社内でのイベントなどのスケジュールが流されている。

人工芝のマットが敷かれたミーティングスペースには、常に多くの人がいる。

  • 社内に固定電話はなく、外部とのやりとりはSkypeで行われる。

  • エントランス近くに置かれた六角形のソファーは、大画面を囲んでのカジュアルなミーティングなどに使われる。

  • 1階カフェテリアの様子。ここではスナック、フード、コーヒーなどを一日中フリーで提供している。2階にはキッチンもある。

  • プロダクトマネジメントを行う部署。デスクを写真のように配置し、コミュニケーションと集中のバランスがとれるようにしている。

エンジニアがチャレンジしやすいように
集中しやすい空間と交流を楽しむ空間を区分

日々の業務ではSkypeを使った遠隔通話を駆使している。だが、隣り合った小さなチームで働くこと、フェーストゥフェースで話をすることも疎かにしない。1つの製品を作るとき、2つ以上の地域にエンジニアが分かれて作業をすることはない。

コラボレーションをするときに時差があることはよくないと考えている。アプリケーションの開発などはその製品の担当プログラマーのそばにいて、チームと共に働き、製品をいつでもテストできることが必要。物理的環境を同じくしないと進められない。 「このオフィスはエンジニアにフォーカスをあてている」というほどエンジニアにとって働きやすく、新しい技術にチャレンジしやすい空間にすることを意識している。

フロアは同心円状にゾーニングされている。オフィスの中心に会議室のようなクローズドのコラボレーションスペースがあり、その周りにワークステーション、ソファー、カジュアルにコミュニケーションをとれるスペースを置いた。

さらにその周りは個人が集中できるスペースになっている。フォーンブースと呼ばれる部屋が23室あり、1対1で話がしたいとき、ビデオ通話がしたいとき、一人で作業に集中したいときなどに自由に使える。

オフィスには至るところにホワイトボードが置かれている。エンジニアのデスクに設置されたものには、製品開発のアイデアやロードマップが書かれている。通りかかったほかの社員がそれを見て「いいアイデアだね」と声をかけ、インフォーマルな交流を生むきっかけとなっている。

社員に最も人気がある場所はキッチンだ。「特にエンジニアにとって、食べ物は燃料のようなもの。シリコンバレーは特に人材獲得の競争が激しい場所だから、彼らが落ち着いて健康的に技術と向き合える環境づくりが欠かせない」という。

近隣の土地がそれほど開発されていないため、オフィスの外に食事をとりに行こうとすると往復40分もかかってしまう。カフェテリアのクオリティが高いため、社内での食事に満足しており、同時に作業に多くの時間をあてることもできる。

周囲への騒音に配慮したい人、集中して作業をしたい人のために「フォーンブース」と呼ばれる小部屋を用意。こうした1~2人用の部屋が全部で23室ある。

「Man Cave(人の洞窟)と呼ばれるミーティングルーム。他の部屋に比べて天井が低く、暗めの造りになっている。

1階の管理系部門の執務スペース。2階のエンジニアのスペースとは対照的に、カジュアルなかたちでのコラボレーションができるよう、壁やパーティションを取り払った。また、天井を高くすることで開放感も生まれている。

360°View

1階の管理系部門の執務スペース。2階のエンジニアのスペースとは対照的に、カジュアルなかたちでのコラボレーションができるよう、壁やパーティションを取り払った。また、天井を高くすることで開放感も生まれている。

※画像をタップすると360°スライド表示が見られます

社員の人生の充実に貢献することも職場の条件
スポーツや食事会で親交を深める機会も豊富

最先端の技術を扱いながらも、効率性や都市文化とは一線を画すことに力点を置いたという。新しいオフィスのあるパロアルトは近郊に自然が多く残る土地で、農場が多く、牛や馬が放牧されている。

通勤時のラッシュも平均よりかなり少なく、自転車で通ってくる社員も増えた。まさにカリフォルニア文化を体現できる場所で、アウトドアをしたり、散歩したり、ランニングしたりするのに絶好のロケーションだ。

サッカーの試合や卓球トーナメント、仕事の後に食べ物を囲みながら、みんなでゲームをしたりもする。少し前には、パロアルト・オフィス・ランというマラソン大会を開き、みんなで一緒に走った。社員が自宅にチームのメンバーを招いてバーベキューを振る舞ったりできるのも、土地柄の良さだ。

移転の候補地の一つには、サンフランシスコもあがっていた。だが、「より仕事と人生のバランスがとりやすい土地はどちらか」という尺度から考えたとき、パロアルトがベターだと判断した。「Skypeのような技術があっても、会社は社員が仕事をする場所、チームでコラボレーションする場所を用意する必要がある。人生の大きな時間を過ごす場所だから、そこは心地よいものでなければならない」。

マイクロソフトという大企業の傘下に入りながらも、独自の社内文化を維持する。スカイプの社員たちはスタートアップの精神を失わず、製品をさらに成長させる。それが結果としてマイクロソフトにも恩恵をもたらす。買収におけるハッピーシナリオの好例だ。

WORKSIGHT 03(2012.11)より

1階カフェテリアの隣にあるプレイルームにはビリヤード台などが置いてある。

ゲームルームにはXboxが置いてある。金曜日の夕方にメンバーが集まってビールを飲みながらゲームを楽しむという。

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