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仕事の体験価値を上げる
ハイエンドのサービスオフィス

オフィスはもっと楽しく刺激的になる

[Spaces]Amsterdam, Netherlands

  • 刺激的で楽しい仕事環境をつくる
  • ブランド化された高い体験レベルを提供できる環境づくり
  • 短期間で拠点を増やし海外展開を視野に

高級ホテルのラウンジを思わせる優美なオープンスペースを見る限り、ここがオフィスだと言い当てられる者はまずいないだろう。デザイナーはオフィスづくりの第一人者、セヴィル・ピーチ氏。「彼女にはいつも感動させられる」と、スペーシーズ創立者のフレデリケ・ケウニング氏も全幅の信頼を置いている。

ケウニング氏の前職は出版社のマーケターだ。オフィスや不動産とは無縁の生活を送っていた。「でもある時、仕事はもっと刺激的で楽しい場であるべきだ、もっと人がつながり協業できる場所であるべきだと思ったんです」

言ってしまえば業界の素人が始めたスペーシーズだ。しかし2008年の起業以来、事業は好調そのもの。理由の1つは、投資家ラタン・チャンダハ氏との出会いだ。

刺激的なデザインが感度の高いワーカーを刺激する

ファッションブランドMexxの初代オーナーで、その後デザインホテルチェーンCitizenMを創立した人物として知られる。「デザイナーにセヴィル・ピーチを薦めてくれたのも彼です。彼となら、普通のシェアオフィスや不動産の業界とは違った視点で運営できると確信できました」

普通のシェアオフィスとは違った視点。それはホテル経営のような、オフィスのブランド化とサービス化を図ることだ。目論見は大当たり。オープン初日から満員御礼、たった6年でロケーションは4つに増え、700人のメンバーが利用しているのがその証だ。

個人向けワークスペースとメンバーシップ、企業向けのテナント貸しという業態は設立当初から変わらない。企業を多く受け入れるのが一般的なシェアオフィスとは異なる点だ。

「建物そのものが大きいので、収入を安定させるため企業テナントを入れるのは理に適っています。集まる人数が増えるのも利点。人が増えるほどダイナミズムは大きくなる。それこそ私がオフィスに求めるものです」

ファイゼル通りのスペーシーズは、もともとは銀行。現在はこの建物をスペーシーズが借り受け、事業を行っている。

創業:      2008年
拠点:      国内4拠点
利用者数:約2500人(全拠点合計)
従業員数:45人
http://www.spacesworks.com


内部にはアートスペースも。この時はアムステルダム写真博物館(FOAM)と提携しており、若手フォトグラファーの作品が数多く展示されていた。スペーシーズが所有するオブジェなども常設展示されている。

  • 開放的なレセプションエリア。フレンドリーなスタッフが気に入って利用を決めるワーカーも少なくない。

  • 座り心地のいいチェアなど、ファニチャーに気を配った設計。オフィスに自然光を採り入れることで生産性を高める狙いもある。

  • レセプションに隣接したオープンスペース。フリーランスの利用者が多いという。

  • 多くの人が集まるソーシャルエリアは2フロア、賃貸用のオフィスエリアは3フロアある。

  • スペーシーズの入居者とスタッフ向けにつくられた食堂。体によい素材を使った品揃えは、食に力を入れているだけあり、「カンティーン」ではなく、まさに「レストラン」のレベル。

人の顔が見えやすい空間が
入居者同士の自然な交流を促す

今回のロケーションはアムステルダム中心部のファイゼル通り。オフィスフロアには2人〜80人規模の会社が入居していた。弁護士事務所やマーケティングコンサルタント、IT、映像会社など業種は様々。街の中心部という利便性から、グローバル企業も珍しくない。

特筆すべきは、彼らがテナントにこもらず交流し合っていることだ。というのも、ピーチ氏のデザインコンセプトは、美しさは大前提としながら「家庭的な雰囲気でフレンドリーな環境をつくること」。ドアや壁の数を減らし、人の顔が見えやすい空間に。1階から3階に続く吹き抜けも、視覚的なつながりを配慮してのレイアウトである。

「もちろん、重要なのは『自らそうしたい』という意思です。出会いに興味がなく、自分の仕事だけして帰る人がいても構わない。そういう人はほとんどいませんけどね」

クオリティの高いカンティーンも特徴のひとつ

「オフィスをサービスとして捉える」というコンセプトは、メンバーとテナントのためのカンティーンが象徴している。これがただの食堂ではない。身体によい素材を選び抜いており、広報担当のリンジー・プロンク氏は「『レストラン』と呼んでいます」とのこと。

ある月にはヘルスウィークを開催、「ベジタリアン」「人口添加物フリー」など毎日違うテーマで健康について考える機会を提供した。1階には地元でも話題の「Bocca Coffee」がドリンクを提供している。

「食べ物は大切です。美味しいコーヒーを飲み、しっかり食事をとると元気が出るし、ハッピーになる。するとよい仕事ができます」。


食堂エリアのキャッシャー。ドリンクとフードを選んでキャッシャーでまとめて支払う。ゲストの同伴も可能だ。このスペースはかつて銀行の金庫だったという。

  • 個人で使用できるブース。作業に集中したい時に便利なスペースだ。

  • テナントの1つ、データ分析を行う企業のオフィス。入居するテナントのデザイン感度は高く、思い思いのインテリアで彩られている。

  • 1階にある打ち合わせスペース。間仕切りがカーテン1枚であるため開放感がある。

  • 4〜5人向けのミーティングスペース。ファニチャーの選び方にスペーシーズらしいセンスが光る。

  • 入居者だけが使用できる「クラブルーム」と呼ばれるオープンスペース。木材など自然の素材を活かしたデザインにまとめられている。

細やかなサービスとインフォーマルな
コミュニケーションを両立させた空間

スペーシーズを選ぶ動機について質問したアンケート結果がある。「全体に流れるエネルギーが気に入ったから」「コミュニティの一部になったような家族的な雰囲気がいい」といったコメントが多いなか、スペーシーズスタッフのサービスを評価する声も。

「落ち着く空間と良いスタッフ、というコメントは、私たちにとって非常に嬉しいことです。スタッフはスペーシーズの顔。常にフレンドリーな態度で細やかな気遣いをすることを心がけています。気遣いと言ってもいわゆる高級ホテルとは違う、インフォーマルなスタイルでね。それができるスタッフがいてこそスペーシーズは成り立っているんです。新人が入るたび、テナントに『どこからこんな優秀な人材を集めてくるんですか?』と聞かれるくらい」(プロンク氏)

「従業員のリクルーティングが楽になった」というコメントは、この場所のブランド感を語るものだろう。場所がよければ、「ここに通いたい」と考える人間も増える。プロンク氏曰く「足を踏み入れた瞬間今日も頑張ろうという気持ちが高まる感じ」。

それゆえか最近、大企業に籍を置きながらスペーシーズを利用するメンバーが増えつつあるという。オランダではオフィスのダウンサイズが進み、自宅勤務などオフィス外で働くことを推奨されている。その代表例がCase1で紹介しているエッセントだが、オフィスを離れたワーカーはどこで働くのか。その1つの回答がスペーシーズというわけだ。

「1人で仕事をしているだけでは、成功できない」

インターネットが普及した当初、「いずれ皆が自宅勤務を始める」と言われたものだ。実際には、そうはならなかった。家で1人仕事をしているだけでは、オフィスに閉じ込められているのと変わらない。

「私たちが常に言い続けているのは、1人では成功できないということです。人と話して刺激を受けることが必要不可欠」(ケウニング氏)

そこでオフィス回帰が起きたのだ。かといって同じ席に毎日座るのではなく、オープンスペースでポジションを変えつつ仕事がしたい、仕事の種類によっては個人スペースで集中したいといった、多様なニーズが生じてもいる。大企業がフットワーク軽くそれらニーズを満たすのは難しいが、スペーシーズなら実現可能。オープンスペースにもプライバシーあるエリアを設けるなど、ワーカーがオフィスに求めるものにアンテナを張り巡らせている。

「今、スペーシーズのメンバーに銀行の職員がいます。その銀行は6年前、完璧にモダンな造りの本社を建てたんですが、今はもうオフィスのダウンサイズをしているというんです。オープンスペースすぎて落ち着かない、クライアントを招くにも難しいと。その点、スペーシーズはオープンさとプライバシーのバランスがうまくとれていると、そのメンバーは言います。とても興味深いですね」(プロンク氏)

コンサルティング(ワークスタイル):自社
インテリア設計:Sevil Peach Gence Associates in cooperation with Maarten Jamin
建築設計:Sevil Peach Gence Associates

WORKSIGHT 07(2015.4)より


テナントの1つで、テレビ番組制作会社のオフィス。


弁護士事務所のテナント。アムステルダムの中心部にあるというロケーションのため、テナントには海外の企業も名を連ねる。

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