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消費者の思いに寄り添う土壌で愛されるロングセラー商品を育む

英国でスムージーのシェア75%を誇るスローフードカンパニー

[Innocent Drinks]Kensington and Chelsea, London, UK

  • 愛されるドリンク商品を作り続ける
  • 「ファン交流」で商品アイデアを得る
  • 短期間で英国内シェア75%、15カ国に展開

創業者たちが13年前にビジネスを始めたとき、真っ先に考えたのが、いかに消費者とコミュニケーションを取るかだった。

今では多くの企業が意識していることだが、当時はかなり斬新な考え方で、以来、イノセント・ドリンクスはその理念を13年かけて培ってきた。ただ単に「いいブランド」というだけでなく、「間違いないブランド」と感じてもらうことに価値があると考えている。

1年前に現在のオフィスに移転してきたとき、エントランスに「wall of love(愛の壁)」というコーナーを作った。消費者からもらった贈り物をディスプレイしたり、オフィスツアーに参加してもらったときの写真を貼ったりするための巨大なピンナップボードだ。

こうした贈り物は頻繁に寄せられ、ある男の子はイノセント・ドリンクスへの思いを題材にした手作りの本を、わざわざオフィスに届けに来てくれたという。オフィスを見たいという消費者の要望があると、ツアーが組まれ、30人いるツアー担当のなかから、空いている人が日程を調整する。こうした社員には、部門やチームに関係なく、案内ルートや話す内容についてトレーニングを受ければ誰でもなれる。

社員とファンが触れ合う場としての「チルアウトルーム」

消費者との接点はほかにもあり、年1回開かれるオープンデイでは抽選で50人を招待して、社員全員とファンが自然体で楽しむ。社内には「オープンでナチュラル」というポリシーがあり、オフィスの設計にあたって強く意識した。

現在のビルを購入した際、1階と2階は完全に独立したフロアだったが、1階のチルアウト・ルームを吹き抜けにして、2階のミーティングスペースと一つの空間になるようにした。

チルアウト・ルームは人工芝を敷き詰め、植物を多く配置した多目的スペースで、外部パートナーとの商談や社内の打ち合わせが行われている横で、スタッフが卓球やボードゲームをしていたりする、オンとオフが同居する場所だ。

ここにはオープンキッチンが設置されており、シリアルやパンなどの朝食が無料で提供されているほか、好きな料理をここで作ってもいい。2階のミーティングスペースからは1階の様子が見渡せるようになっていて、オープンな一体感がある。

2011年にハマースミスからケンジントン&チェルシー区にある現在のオフィスに移転した。イノセント・ドリンクスのオフィスは、代々「フルーツタワー」という愛称で親しまれている。
創業:1999年
売上高:2億ポンド以上(2010年度)
従業員数:約250人(欧州支社含む)
販売国数:欧州中心に15カ国
http://www.innocentdrinks.co.uk/

チルアウト・ルームの入り口にある「wall of love」。メッセージカードやお礼の手紙、写真など、ファンからの贈り物で埋め尽くされている。

  • オフィスの中で一番大きなミーティングルーム。カジュアルな雰囲気で外からも中の様子が見える。

  • キッチンは社員交流の場であるほか、レシピ開発やテイスティングをする場所でもある。

  • すべてのフロアに人工芝が敷かれている。夏場は素足で過ごす人も多いという。

  • 1Fから6Fまでの階段には1999年の創業から現在に至るまでの社史をディスプレイが飾られている。

バーチャルとリアルの両面から
社員同士が交流を深める

社員の意欲的な行動を奨励する姿勢は「今月のスタッフ」にも表れている。業務で実績を挙げたり、チャリティに参加したり、何らかの功績を挙げた人を表彰するもので、朝礼で発表されると、社員全員がその人に頭を下げて労をねぎらう。

ちょっとしたディナーができるくらいの賞金がもらえるほか、月内は常にほかの社員から紅茶やコーヒーのサービスでもてなされる。社員同士は基本的には全員が顔見知りだ。

特に同期入社は学校のクラスメートのように仲良くなる。フットボールやロッククライミングなど、交流を深めるクラブ活動もある。チルアウト・ルームの壁には社員それぞれの子ども時代の写真が貼られており、ここでお互いの人間的な一面を垣間見ることができる。

オンライン上には、ウィキペディアのしくみを使ったイントラネットの社員プロフィールページがあり、席の場所や、関わっているプロジェクトのこと、趣味や特技、個人のメールアドレスや電話番号などを自由に書き込める。加筆・修正したり、任意のページを追加することもできる。

気軽にアイデア交換できるフラットな雰囲気

内容は8割が仕事で、2割が遊びに関するものだ。たとえば「オレンジジュース」という単語で検索をかけると、かつてオレンジジュースのプロジェクトに関わった経験のある社員の名前が表示される。

アイデアを思いついたら、誰に話してもいい。所属するチームだけでなく、ほかのチームの人でもいいし、いわゆる上下関係がないので「この人に相談したい」という人がいたら、相手の地位に拘わらず、直接話すことができる。直属のマネジャーとは週1回マンツーマンのミーティングがあるので、糸口が見つからないときはそこで相談もできる。

金曜日の午後5時からチルアウト・ルームで開かれる「フライデイ・ビズ」も、社員にとっての重要な交流の場だ。ドリンクや軽いおつまみも出て、仕事が終わった社員が参加して、仕事のことからプライベートのことまで、気軽に話し合う。

オープンでナチュラルというポリシーは会社の隅々にまで浸透している。階段の壁には、そうした取り組みのすべてが、時系列でディスプレイされている。現在のところまで来ると、そこから先は白紙になっており、今まさに歩みが作られていると実感できる。

エレベーターホールには毎年行われる「ニットの帽子(the big knit)」の受賞作品が飾られている。「ニットの帽子」は、ボトルにかぶせる手編みの帽子を募集、優秀作品を決めるキャンペーンだ。毎年2万点近い作品が送られてくるという。

オフィス1Fにあるチルアウト・ルーム。社内ミーティングやファンとの交流に使われる。チルアウトとは「くつろぐ」という意味だ。

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オフィス1Fにあるチルアウト・ルーム。社内ミーティングやファンとの交流に使われる。チルアウトとは「くつろぐ」という意味だ。

※画像をタップすると360°スライド表示が見られます

高成長を遂げ、ブランドも定着
英国No.1の果実飲料メーカーへ

13年かけて作り上げた会社のカルチャーはイノセント・ドリンクスを英国トップのスムージー飲料に育て上げた。この社風を維持するため、会社として採用・社員育成にも力を入れている。

たとえば採用面接はかなり長いプロセスがあることで知られる。会社の価値に合うかどうかを重要な審査基準にしているからだ。

会社には5つの価値(Value)があり、「商業的な考え方」「寛大」「ナチュラル」「起業家精神」「責任感」のすべてに合致していることが基本条件。入社した後も、6カ月目になると「イノセントアカデミー」という泊まりがけの研修に参加する義務がある。オフィスから離れたところでコースに参加して、スキルを学ぶ。

社員がお互いに教え合って能力開発を行う

その後も、パーソナルディベロップメントやタイムマネジメントなど、チームを超えたワークショップや講習会が随時開かれているので、必要に応じて参加する。

これは強制というよりも、イノセント・ドリンクスの社員として活動するために最適な能力開発の手段となっている。社内にはいろいろな知識を持った社員がいるため、外部から講師を招くよりも、社員同士がお互いに教え合うプログラムがほとんどだ。

現在のカルチャーを、会社やビジネスの規模拡大に合わせてどうハンドリングするかが、今後の大きな挑戦となる。

WORKSIGHT 02(2012.6)より

チルアウト・ルームの壁には、社員が子どものころの写真が飾られている。

 

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