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スウェーデンのコ・クリエーションを支える実践重視の次世代人材育成スクール

クリエティブ人材を輩出する社会人向け教育研修機関

[Hyper Island]Midsommarkransen, Stockholm, Sweden

ハイパーアイランドは、1995年にジョナサン・ブリッグス、デヴィッド・エリクソン、ラーズ・ランドーの3人の創業者によって設立された。

デジタルテクノロジーのもたらす変化によって、旧来のものの見方や教育法が転換期に差し掛かっている。物事の答えは一つではなくなり、複数の回答が可能になった。変化のスピードも増している。3人はこの世界に適した、まったく新しい学校が必要だと考えた。

プログラムは業界の専門家やリーダー層を対象にしたエグゼクティブ・コースと、社会人を対象としたトップアップコースから構成される。ストックホルムの校舎はオープンオフィス形式で、学生と職員が仕切りもない同じフロアに座る。特定の席は決まっていない。

教科書もテストもない社会人向けスクール

授業用の教室や固定のカリキュラムはない。教科書もなく、教員も常駐しない。代わりに学生自らが設計・実施するプロジェクトを通じて「経験に基づく学び」という方法論をとっている。

学生は自発的にプロジェクトを作って、積極的に参加する。学習に関する責任はすべて学生にある。新しい学習法や問題に対する解決法を見つける姿勢、変化への対処法などを、プロジェクトを通じて身につける。学生がかつて経験したことのない問題に直面すると、スタッフは積極的に解決策を見つけられるよう導いていく。

ハイパーアイランドは、95年の開校以来、世界中のメディア企業やエージェンシーに続々と卒業生を送り込んでいる社会人向けスクールだ。

開校:1995年
生徒数:約400人(フルタイム)
授業期間:40~90週
校舎数:スウェーデン2校、UK1校
http://www.hyperisland.se/

  • ストックホルム校のエントランス。校舎はコワーキングスペースとしても使われる。

  • この日はあるチームが新事業の発表をしていた。こうしたプレゼンも本番さながら、学生や教師の厳しい目にさらされる。

  • カリキュラムが無い分、職員は常にコミュニケーションを取っている。変化の激しいデジタル業界にキャッチアップするため、カリキュラムは半年おきに見直される。

  • 進行中のプロジェクトをTodoリストで管理していた。教師も、学生も、何気ないアイデアや気になっていることを、常にビジュアライズしていた。

プロジェクト立ち上げと
チームワーク精神を経験させる

仮に失敗しても、そこから学ぶことで、次のプロジェクトに経験を生かすことができる。一人の力は限られているから、チームワークと現実の状況に関する理解が問われる。学生は、必要に迫られて自分以外の誰かとコラボレーションをする中で、チームの作業効率はどうすれば上げられるのかを発見していく。

実際のビジネスでは共同作業がスムーズであるほど、利益も上がる。専任の講師や教師がいないのは、各プロジェクトに最適な業界のプロフェッショナルを招いて、現実に即した体験型の学習を行うからだ。その結果、企業や産業の現場に近い学習の場を提供できる。

チームを派遣して社内研修を行う事業も開始

今から5年前、ソーシャルネットワークが普及し始めたとき、エグゼクティブ用の短期コースを要望する声が増えた。最初は企業だけだったが、デジタルエージェンシーなどからの要請も急増した。テクノロジーの進歩の速さについていけなくなり、ビジネスの現場でパニックが起き出していた。

そこで2007年に開講したのが「マスタークラス」だ。エグゼクティブを専門にしたカスタム仕様の集中コースで、クリエイティブ、エグゼクティブ、会計など、分野を絞って数人単位で行われる。

オープンコースを開設したところ、企業やエージェンシーからの多くの参加があった。そのうち、「会社全体で研修を開きたい」という要請が出てきた。そこで同じようにカスタム仕様でコースをデザインし、ハイパーアイランドのチームが直接その会社に出向いて研修を行うというスタイルを始めた。

現在では、スウェーデン国内にとどまらず、世界規模でトレーニングが行われている。「会社の要望に応じてトレーニングの内容を組み、チームを派遣する」というやり方は、全プログラムの75%にまで拡大している。

大企業を対象にする場合、だいたい1年計画で取り組む。5000人規模の会社ならば、30人程度をマスタークラスに呼び、4カ月間のプログラムを展開する。講座終了後、3カ月が経過した時点でフォローアップをして、新しい思考パターンや方法論、デジタルテクノロジーの応用に慣れてもらう。

教科書もテストもなく、生徒同士で新事業を考えるのが日々の”授業”。 人気の秘密は「経験に基づいた学習」によって、実践で使える考え方・スキルを身につけられることだ。

創業時からのメンバーでパートナーのクリスチャン・オルソン氏。教員はアドバイスはするが、答えを教えることはない。

ハイパーアイランドの学生は活気に溢れ、起業前夜のような熱を持っている。

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ハイパーアイランドの学生は活気に溢れ、起業前夜のような熱を持っている。

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エージェンシーのクリエイターから
一般企業のSNS担当者まで育成

デジタルエージェンシーからのニーズの多くは、デジタルに関しては最先端だけれども、チームワークに関して欠けているという課題があり、そこを重点的に高める研修をしたいというものだ。

コラボレーションやリーダーシップ、オーガナイズ能力、商品開発などに関して、アイデアやコンセプトの発展をテーマとしたワークショップを準備し、新たな考え方やクリエイティブなプロセスの再構築を学べるようにしたりする。

一般企業からのニーズが高いテーマは、会社がどのようにSNSに対応するべきかだ。デジタルテクノロジーが会社に影響を及ぼす要素をすべてカバーしなくてはならないが、この点にフォーカスした問い合わせが多い。たとえば、SNSを通じてコーポレートブランドのコミュニケーションを行うとき、社員それぞれがブランドを所有しているような考え方に陥り、結果としてブランドが「みんなのもの」になってしまう、などだ。

すべての社員のデジタルリテラシーを高める

それはある意味よいことではあるが、ブランドまたは会社として、どのような方針で統合的なアプローチをとっていくか、考える必要が出てくる。すでに露出しているイメージをどのように利用し、コントロールしていくか。

もちろん、そこには一つの「正しい方法」というものはなく、会社ごとに対応を決めていくしかない。ハイパーアイランドが培ってきたメソッドを生かし、一緒に考えていく。

重要なことは、今や社員全員がテクノロジーに通じていなければならない点だ。1人のデジタルエキスパートがすべてを手掛けるのではなく、全員がデジタルテクノロジーに関するそれなりの知識や概念を持つことが要求されている。逆に言えば、そこに早く気づいた企業は成功し始めている。

WORKSIGHT 02(2012.6)より

日常会話や学生同士の打ち合わせは、主に英語で行われている。英語の使用は強制ではないが、慣習として英語を使う人が多い。

 

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