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社会のインサイトとシードを集め
企業が求める接点を提供する

アイデアを形にする技術を備えたコンサル集団

[Continuum]Boston, USA

  • 社会を変える具体的なイノベーションをサポートする
  • 空間全体のキュレーションを実行
  • 世界的なコンサルティングファームとして認知される存在に

コンテニュームは社会を変えるイノベーションをサポートするコンサルティングファームだ。ボストン郊外の本社の他、カリフォルニア、ヴェニス、ミラノ、上海、ソウルにもオフィスを構え、クライアントは世界中に広がっている。

「我々の仕事は、クライアントの対象とする消費者を理解することから始まる」と語るのは、会長兼最高デザイン責任者のジャンフランコ・ザッカイ氏だ。

顧客満足を追求するには顧客の先に存在する消費者、さらには社会そのものへの洞察が不可欠だ。「クライアントは自分たちの提供するものを消費者が本当に欲しているか、またどのように消費者とコネクトすればいいかを知りたがっている」と、ボストン本社所長のマイケル・アーニー氏が言葉を添える。

社員が持ち回りでオフィス内に実績を展示する

より深いレベルで企業とコミットし、課題を解決するため、同社では上流から下流まで一貫したサポート体制を敷いている。例えば医療用のチェアの開発を依頼された際は自社の工房に病室の環境を整備したうえで設計、プロトタイプ製作を行った。アイデアを形にする技術を持つところが、方針を立てるだけのコンサルとの決定的な違いだ。

こうした強みを最大限に発揮するため、オフィス環境も独自色が強い。ボストンの社屋は150年前に建てられた倉庫を改築したもの。広々とした空間に同社の実績を展示するスペースもあり、ショールームの機能も果たす。社員が持ち回りで展示内容をキュレーションし、訪れるクライアントを楽しませている。

元が倉庫だけあって伸びやかで気持ちの良い空間が広がっている。

創業:1983年
売上高:非公開
経常利益: 非公開
従業員数: 150人(2013)
http://continuuminnovation.com

患者用のチェアを開発するため自社内に作った病室。特殊機器を多く使用するため、実際の病室でシミュレーションしながらプロトタイプを製作した。

  • インタビューや観察調査などを通してヒントを得た人物の写真をオフィスに飾っている。社会とのつながりを常に感じながら仕事に励む。

  • パソコンで作業するエンジニアがいれば、島型にデスクをつきあわせてディスカッションするストラテジストもいる。働き方の自由度を高めることが知的生産性を向上させるカギとなる。

  • 工房には機械部品などが所狭しと収められている。素材が豊富に揃っているので、すぐにプロトタイプ製作に取りかかることができる。

  • ポストイットを使って知見を整理する。デジタルに精通した同社だが、こうしたアナログの手法も活用して衆知を集め、イノベーションにつなげている。

  • ライブラリーにはワーカーのインスピレーションを刺激するプロダクトが並べられている。

社会との接点が豊かにすることで
社員のモチベーションが上がる

コンサルティングでは視点を多角化するため、デザイン、エンジニアリング、ビジネスといった異なる分野の専門家がチームを組む。まずは対象とする世界にどっぷり浸かって課題やユーザーを探る。例えば一般の消費者にインタビューして市場を肌で感じる、対象分野の商品を買い込んでマーケットを研究するといった具合だ。デザイナーのアレックス・ブロアーマン氏いわく、「素早くその道のミニエキスパートになる」。

その後、情報を分析してテーマを絞り込み、クライアントやインタビュイーにフィードバックする。コンセプトが固まったら開発だ。エンジニアはデザインや機能を高めつつローコストで仕上げる。ブロアーマン氏は「エンジニアリングの部署は私達の誇りのひとつ。開発に情熱を持っているし経験も重ねている」と胸を張る。

社員にとって魅力あるプロジェクトに取り組めることはモチベーションとなる。また、ヒエラルキーがなく意思決定や実行の権限が与えられていること、個人の職能やプロジェクトマネジメントの技量を高めるトレーニングがなされること、ボストンという刺激的な場所に本社があることも重要だ。

さらに、オフィスの随所に世の中とのつながりを感じさせる工夫がある。特に目を引くのはインタビューなどで関わった人々の写真を貼った壁で、社会との接点の豊かさを感じさせる。

企業と社会の橋渡しを担うコンサルティングファームへ

またワークスペースは透明性の高いオープンな空間にしており、デザイナーやエンジニア、クライアントなど様々な人のコラボレーションにふさわしい。半地下のスペースを集中を高める場として活用しているほか、集めた情報やブレインストーミングで出たアイデアをポストイットで壁に貼り付けるなど、アナログな空間で思考をインスパイアさせているのも面白い。

「様々なスペースの組み合わせが互いにエネルギーを生み出している」とアーニー氏。プロジェクトの状況に応じて空間を使えるので社員は主体性を発揮して動けるようになった。

現在進行中の働き方を探るプロジェクトでは、部屋にカメラを設置してメンバーの働き方を撮影するなど、社員をプロトタイプとしている。自分たち自身を含めた人間への好奇心があるからこそ、世の中のインサイトを鋭くつかみ、顧客に良質のシードを提供できるのだろう。

世界的なコンサルティングファームとして、また企業と社会の橋渡し役として、コンテニュームは広く認知される存在になった。MITとのプロジェクト「OLPC」では、開発途上国の子どもたちに向けた100ドルのラップトップコンピュータを開発して話題を呼んだ。ザッカイ氏は「人々に良いことをするというコアバリューを今後も大切にしたい」と展望を語っている。

WORKSIGHT 05(2013.12)より

プロジェクトの状況や個人の職能に対応できる多様な集中環境を整備している。

エンジニアやデザイナーがディスカッションしながら開発に取り組む。

CNCなど大型機械も設置。質の高いプロトタイプ作りが可能。

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