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貧困問題解決への意志をデザイン
支援者とリーダーを増やす

社会にインパクトをもたらす投資を実現

[Acumen]New York, USA

  • なるべく多くの人に使命を伝え、巻き込む
  • 使命を広く伝える機会と環境を作る
  • 社会的に差別化されたNPOとして認知されるようになった

アキュメンは世界の貧困問題の解決を目的とした社会的投資ファンドだ。慈善目的の資本を財源として、貧しい人々に重要な製品やサービスを提供するビジネスを構築し、貧困地域の経済的自立を促している。これまで81の企業が1億人以上の低所得者のためにサービスを提供できるようにし、6万近い仕事を創出してきた。

設立10年目の2011年、アキュメンは大きな転換点を迎えた。「我々は社会的リーダーの育成にも取り組んでおり、他の投資会社と違うことを示す必要を感じていた。

そこで思い切ってブランドの再構築に踏み出した」と、ブランディング&クリエイティブマネジャーのジェームズ・ウー氏は語る。この結果、社名をアキュメン・ファンドからアキュメンに変え、ロゴも変更した。

リブランディングによって組織の価値観が再定義された。イノベーションアソシエイトのジェシカ・マーティン氏は「私たちは人間の尊厳を重視し、社会の変化を実現するために現場の最前線で汗をかいている。そして現場の人々がアキュメンの活動を理解し、つながりを持つことを確かめたかった」と語る。

空間をできるだけ仕切らず、ガラスを多用して透明化。メンバーの積極的な情報共有を促す。

設立: 2001年
投資額: 8,900万ドル
投資先: 南アジア、アフリカの81企業
従業員数: 78人(2013)
http://acumen.org

  • 支援地域であるアフリカや中東、東南アジアのカルチャーを連想させるマルチカラー。多国籍なアトモスフィアが広がる。

  • 支援地域で撮られた写真を壁一面にパネル化したミーティングルーム。大都市のオフィスだからこそ、現地の人々の息遣いを常に感じ、つながりを維持する姿勢が欠かせない。そのための工夫が凝らされている。

  • 執務スペースと別フロアにあるワークショップルーム。ここで社外のパートナー達と様々なプログラムを考案している。

本部の全体会議で
個々人の気付きをシェアする

アキュメンでは、プラスアキュメンチャプター(支部)や自立したボランティアグループを通じて世界各地から志を同じくする人々を集めている。こうしたチャプターやボランティアグループはアキュメンの活動を支える資金調達、社会事業、「Patient Capital(短期的なリターンをあえて求めない資本)」などについてそれぞれの地域社会で教育を行っている。

世界各地にある23のチャプター間でより効果的な交流を図るため、チームはチャプター内でコミュニケーションを深めるのはもちろん、本部と毎月電話会議を行って活動状況を確認している。必要に応じて本部がコーチングも行う。チャプターのリーダーを集めるイベントも毎年開催。こうして同社の使命を多くの人に伝えてモチベーションの高い人を巻き込み、支持の輪を広げている。

総務部長のナデージュ・ジョセフ氏は「オフィスは我々の働き方を反映したもの。コラボレーションしやすいオフィス作りを目指しているので、個別スペースは設けていない」と語る。本部メンバーのみならず、世界のチャプターメンバー、支援対象者、投資家と多彩な人々と連携する仕事だ。参加型オフィスの整備でオープンな働き方が可能になる。

例えば普段、本部の全体会議では個人的な気付きをシェア。「生活の中で感じたことや国際問題まで、様々なテーマを自由に語ることで、自分たちと世界の結びつきを認識できる」とジョセフ氏。社会課題を解決する組織でありながら個人の価値観を大事にするところにアキュメンらしさが出ている。

オフィスデザインはマルチカラーを多用してダイバーシティを表現。投資先企業やアキュメンコミュニティのメンバーたちの写真、アキュメンが活動する各地域からの記念の品なども飾られている。

リブランディングによって組織の価値観が社内外に明確に表現されるようになった。社会的インパクトをもたらすNPOとして、信頼性の向上と資金面・人材面でも拡充を実現。今後も厚みのある支援を展開していく。

Aの字が欠けたロゴには自分たちの仕事に終わりがなく、また人々の手助けを必要としているという二重の意味がある。

役割を終えた投資案件は、成果として写真とともに壁に飾られる。

無料でオンライン受講できる
リーダーシッププログラム

世界に根を張り、アキュメンの活動を支えるのがプラスアキュメンというチャプターのネットワークだ。ここでは様々な学びの場も提供している。

プラスアキュメンでは社会貢献活動のための専門性を高めるプログラムを複数用意している。リーダーオンラインコース「アキュメン・リーダーシップ・エッセンシャル」はその1つ。誰でも無料で受講できる。

「社会的課題を解決するには様々な地位にいる人をまとめなくてはならない。このプログラムでは、いかに人々を共通の目的を持つ集団の成員とし、変化を起こしていくかを学ぶ」とマーティン氏は説明する。この他、アキュメン以外の団体が提供するプログラムもある。

また、オンラインのカリキュラムに加えて、アキュメンのリーダーシップ・プログラムには「グローバル・フェローズ・プログラム」と、アキュメンが活動している多くの地域で実施されている「リージョナル・フェローズ・プログラム」がある。

「グローバル・フェローズ・プログラム」では様々なバックグラウンドを持つ専門家によるリーダーシップ・トレーニングを受けた後、投資先企業で9カ月間研修する。一方、「リージョナル・フェローズ・プログラム」は、社会的なイニシアティブをとるための個々の活動を支援し、トレーニングやネットワーキング、コネクションのための場を提供している。

WORKSIGHT 05(2013.12)より

上/チャプターは23。うち1つは東京にある。ニューヨーク本部のほか、支部がインド、パキスタン、ケニア、ガーナにある。

プラスアキュメンのウェブサイト。動画を織り交ぜながら幅広い人々の参加を促している。
http://plusacumen.org/

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