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100年前の社交場が
グローバル投資の拠点に

[Alibaba Group]San Francisco, USA

創業20年にして中国内に巨大な「帝国」を築き上げたアリババ・グループ。時価総額は50兆円超、GAFAにも迫る勢いで今なお成長を続ける中国最大のIT企業だ。モバイル決済サービス「アリペイ」のユーザー数は9億人を突破した。中国を制圧したアリババは、世界進出へと舵を切った。そのオフィスの1つがサンフランシスコにある。この地を代表するアールデコ調建築の最上階。かつてパーティなどが催されたボールルームをオフィス用にリノベーションしたものである。天井に刻まれている細密なレリーフなど、華やかだったであろう当時を思わせるディテールが慎重に修復された。もっとも、そのすぐ脇では無骨な配管が露わになっており、華やかさ一辺倒ではない。こうしたアールデコとインダストリアルの対照はO+Aのセンスに依るものだという。

「このビルに最初に足を踏み入れた日、『ワーオ、ここで働きたい』と思いました」とロザンヌ・ロス氏。アリババが世界各地に構える拠点の中でも、ここは特別な場所だ。理由は、美しさばかりではない。

 アリババが掲げるビジョンは「中小企業をアマゾンのような巨大な会社に成長させる」というもの。アリババの事業の柱であるECにしてもそうだ。最先端のテクノロジーを用いて、夫婦で営むような小規模商店や中国の古典的企業を世界に売り出す、そのための社会インフラという位置づけだ。「そんなアリババの精神を、この新旧ミックスしたデザインは表現していると思います」(ロス氏)


オフィスが入居しているビル「パックベル」。石張りの外観が歴史を感じさせる。アールデコ様式の傑作建築で、「サンフランシスコで最も美しいビルの1つ」とロス氏。

  • ガラス張りの会議室。窓から差し込む自然光が心地よい。会議室の名前には、アリババが本社を置く「杭州」をはじめとする中国の都市名が選ばれている。

  • ボールルーム(舞踏室)を改修し、オフィスとして使用。天井にはアールデコ調の装飾を残す。一部(写真奥)のみ、天井が外され、配管がのぞいている。歴史とインダストリアル調の共存。

  • 個人用のデスク。建物は古いが、家具類は機能的な新しいものが使われている。取材当日は多くの従業員が中国に出張しており、人影はまばらだった。

  • 壁に飾られたアリババの歴史。従業員には「タイムライン」と呼ばれる。写真を添えた年表形式になっており、創業した1998年からのアリババの歩みを窺い知ることができる。

  • オープンな雰囲気の会議室。中国からアリババ副会長のジョー・ツァイ氏がやってきた時は、オフィスとして活用される。

  • キッチン周辺は、広々としたオープンスペース。ここでも、天井の一部は取り外されて、配管やセメントの壁面がむき出しになっている。

投資家や政界要人などのVIPを
新旧ミックスしたデザインが迎える

 O+Aとアリババをつなげたのは、同じビルに入居しているイェルプである。O+Aが手がけたイェルプのオフィスを気に入ったアリババがO+Aに声をかけた。O+Aがデザインに着手する以前から「風水師」がプロジェクトに関わっていたというのは、中国企業らしいエピソードだ。家具の配置などはほぼ風水に従っているという。O+Aが貢献したのは、ロス氏の言う「新旧ミックスしたデザイン」の部分だ。

 オフィスでは現在、2つのチーム、約30人が仕事をしている。1つはPRや報道機関担当などコミュニケーションを司るチーム。もう1つは投資チームだ。ベンチャーキャピタルのようにアメリカで投資を行っている。サンフランシスコの金融街そばというロケーションは、彼らにとって申し分ないものだ。同じカルフォルニアのサンマテオやサニーベールにもオフィスはあるが、そこで働いているのはエンジニアが中心。またオフィスを訪ねてくるゲストも少ない。一方こちらは、投資家や政界要人などVIP客をしばしば招き入れる。クラス感あるオフィスが求められた理由の1つがこれだ。

 ちなみに、杭州にあるアリババの中国本社では3万5,000人もの社員が働いている。建物は巨大、内装はごくシンプル。そのため中国からこのオフィスにやってきたゲストは、あまりに対照的なこのオフィスに「ひっくり返るほど」驚くという。「ワーオ、こんなにスペースがあって、天井が高い!という具合にね」(ロス氏)

text: Yusuke Higashi
photo: Satoshi Minakawa

WORKSIGHT SPECIAL EDITION【Studio O+A】(2019.7)より



アリババ・グループ
オフィス・マネージャー
ロザンヌ・ロス

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[田川欣哉]株式会社タクラム・デザイン・エンジニアリング 代表/デザイン・エンジニア

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