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MINIの哲学と
未知の才能が交わる場所

[A/D/O] New York, USA

エー・ディー・オーは、自動車ブランド、MINIがニューヨークに設立したR&Dラボである。この聞きなれない名は1959年、最初のMINIを手がけたデザインチームのコードネーム「Amalgamated Drawing Office」の略称だ。

「僕らは、自動車メーカーではなくデザインカンパニーだと考えています。未来志向と、新しいプロダクトとサービスによって、都市生活と世界に恩恵をもたらすデザインカンパニー。だからクリエイティビティを大いに刺激してくれる場所を作りたかったんです」
(マネージング・ディレクターのネイト・ピンスレイ氏)

彼らは、エー・ディー・オーを拠点に、MINIの新しいエコシステムを作ろうとしている。エリアはコワーキング、レストラン、スタートアップのためのアクセラレーター「URBAN-X」、ファブスペース、無料で使えるパブリックスペースなどで構成された。ここに集まるのは、グラフィックデザイナーや建築家、プロダクトデザイナーといった多様なクリエイターたち。メンバー間で、あるいはイベントで隣り合った者同士の間でひらめきが生じ、素晴らしいコラボレーションに進展してゆく。これこそ、エー・ディー・オーが期待していることだ。


エー・ディー・オー
マネージング・ディレクター
ネイト・ピンスレイ

  • コワーキングスペース、レストラン、アクセラレーター、エキシビション、ショップなどから構成される。

  • ブルックリン北西のグリーンポイントは優れた工場やスタジオが点在するエリア。メンバーは、こうした地域のリソースも活用することができる。

  • 会員制のコワーキングスペース。エー・ディー・オーの価値観を共有できるメンバーのみが選抜される。

  • 選抜されたメンバー向けに開放されるファブリケーション・スペース。機材の使い方などを教えてくれるファブリケーション・マネージャーが常駐する。

  • 未来の都市生活を作るアクセラレーター「URBAN-X」。選抜企業には20週間にわたる濃密なプログラムを提供。

メンバーを選抜制にし、
MINIの価値観を共有する

「予期せぬコメントを得られるようスペースをオープンにすることでセレンディピティが生まれる」とピンスレイ氏はいう。例えばコーヒーを飲みにきた2人が会話を交わす。そこで生まれたアイデアがプロジェクトになり、彼らはコワーキングにメンバーシップ登録をし、ラボでプロトタイプが作られ、完成に至る。そして他のメンバーとその話を共有する。アイデアがプロダクトになるまでの、デザインのライフサイクルがひとつ屋根の下で起こり得るのだ。

もっとも、場を作り人を集めさえすればコラボレーションが生じると考えるほど、彼らは楽観していない。肝心なのは、MINIの価値観を共有できるかどうか。コワーキングスペースのメンバーを選抜制にしているのも、そこに理由がある。応募者は殺到しており、倍率は10倍以上。選抜された会員には、広々としたファブスペースも開放されている。

「一般的なコワーキングスペースには、たくさんの人がいても1つの価値観を共有したコミュニティはないように思います。僕らは、この場所に素晴らしい対話をもたらし、ワークスペースをただ『人々がラップトップを開いている場所』以上のものにしてくれるメンバーを探すことにしています。取り組んでいるプロジェクトは? 使いたいマシンは? ほかのメンバーとのコラボでどんなものを生み出せる? 僕らが応募者に聞くのはそんな質問です」

  • ニューヨーク・スタイルのダイナーをメタリックな素材で表現したキッチン。

  • オープンスペースは近隣のフリーランスたちがオフィス代わりとして利用している。

  • クラウス・マイヤー氏ら世界トップクラスのシェフ2人が腕を振るう北欧料理レストラン「Norman」。

  • トップライトから自然光が降り注ぐエントランス。

  • エントランス前は周辺住民の憩いの場。ワークスペースとして利用する人々も。

  • もともとあった工場のレンガ壁に描かれていたグラフィティを組み替えてモザイク状に。遊びにも手が込んでいる。

  • 入居するクリエイター、スタートアップが作った商品などが取り扱われるショップ。

  • 世界を巡回し、その都市に応じた新しい都市住居を提案する「MINILIVING」。

5年後、10年後という時間軸で
近未来のアイデアを練る

エー・ディー・オーの中でベンチャー・アクセラレーターとして運営されている「URBAN-X」は、現在17の企業に投資をしている。そのほか未来の住まいを提案する「MINI LIVING」、ファッションレーベル「MINI Fashion」などが入居した。いずれも、MINIがデザインカンパニーとして新しい領域、新しいプロダクト、新しいサービスを世界にもたらすためのプロジェクトだ。あわせて、各種のイベントを重視するのもエー・ディー・オーの特色だと言える。クリエイティビティを引き出すには2つの要素があると彼らは考えている。1つはフィジカルなスペース。デスクやツール、インスタレーションといったモノづくりの環境だ。もう1つがプログラム。「人々がデザインや未来についての視点やアイデアを交換できる場」を用意することだ。

「それが『リサーチ・プログラム』。エー・ディー・オーが四半期ごとにテーマを策定する社内プログラムです。僕らは素材やツール、スキルといった意味でのデザインについては多くを語りません。興味があるのは近未来へのアイデアです。5年後や10年後という時間軸で考えた時に世界で何が起こるのか。それはデザイナーである僕らにどんな影響をもたらすか。デザイナーはどんなおもしろいキャリアパスを描けるか。リサーチ・プログラムの参加者とは、そうした価値ある議論をしています」

ドイツの企業がブルックリンにR&Dラボを設立したのは、豊富なクリエイティブ・キャピタルはもちろん、ファイナンスやメディアとの接点があるからだ。ここなら、デザインの最先端で起きていることを見落とす心配はいらないというわけ。なかでもここグリーンポイントはクリエイティブ・コミュニティが栄えるエリアだ。設立1年足らずだが、エー・ディー・オーは既にブルックリンのモノづくりのハブとして機能し始めている。

「夢のシナリオがいくつかあります」とピンスレイ氏は言う。「1年後か5年後かわかりませんが、1人のデザイナーが、あるいはデザイン・コミュニティ全体がこう言うんです─『この重要な作品を生み出すにあたって、エー・ディー・オーが大事な役割を果たした。それによってデザインがまた1つ進化した』と。例えばね」

コンサルティング(ワークスタイル):N/A
インテリア設計: :nARCHITECTS
建築設計::nARCHITECTS

text: Yusuke Higashi
photo: Ryo Suzuki

WORKSIGHT 13(2018.6)より



人々がアイデアを交換できるイベントを重視。オープニングに選ばれたテーマは「人工知能が創造する世界はディストピアか、ユートピアか」。

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