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渋谷というカルチャーの発信地でクリエイティブを交差させる

異分野の人をつなぐワークラウンジ

[Creative Lounge MOV]渋谷区, 東京, 日本

現在、日本だけでなく世界各国の大都市で、コワーキングスペースが急速に増えている。コワーキングスペースといえば、一昔前までは、個人事業主や起業家だけが集まる場所だった。しかし現在は、企業内個人が外部ネットワークを活用しながら働く場所として注目を集めている。

その背景にあるのは、社会の成熟化や経済のグローバル化による企業の変化だ。多くの企業が新市場や新商品を開発していくことは必須だが、既存の枠組みや人材だけでは限界がある。企業内の個人それぞれがアイデアを出し合い、外部とコラボレーションしていくために、このようなコワーキング・スペースが注目されている。

業種や業界、個人と企業の壁を越えて働く場として、2012年4月に渋谷ヒカリエの8階にメンバー制ワークラウンジ「Creative Lounge MOV(モヴ)」が誕生した。

渋谷は様々なカルチャーの発信地であり、生活者の声が多く集まる場所だ。企業にとって商品開発には欠かせないマーケティング拠点の1つでもある。MOVとは「ムーブメント」の意味で、クリエイティブなビジネスやプロジェクトを生み、発信していく場所として名付けられた。

メンバー交流から新しいアジェンダを生み出す空間

開業から半年で会員数は1000人を超え(ワンタイム利用含む)、異分野・異文化のクリエイターやイントラプレナー、アントレプレナーによるコラボレーションが始まっている。

MOVがこれまでのシェアオフィスと違うのは、異分野・異文化のメンバーの交流から、新しいテーマや価値を創造するためのサポートシステムだ。コンシェルジュが常駐しコミュニティを活性化するとともに、定期的にイベントを開催したり、外部刺激をコミュニティに持ち込んだりすることで、新しい発見や発想が生まれやすい環境を作っている。

MOVには大きく二つの利用形態がある。一つはラウンジ会員で、中央に広がるオープン・ラウンジを9時から22時迄の間、自由に使うことができる。空間のデザイン・コンセプトは街の中心にある広場で、ベンチやソファー、集中できるブース席など、仕事内容やその日のモードによって好きな場所を選んで働くことが可能だ。

もう一つはレジデンス会員で、ラウンジの奥に配置された静かなエリアを24時間制限なくオフィスとして利用できる。ローパーティションで仕切られたブース席と、ロッカー付きのシェアテーブル席があり、いずれも月単位での契約だ。海外や地方に本社を置く企業の拠点としてのニーズも高まってきている。

東京・渋谷のランドマークである「渋谷ヒカリエ」。東急東横線をはじめ東京メトロやJRの駅と直結している。

エントランスの様子。ここから世界に向けてムーブメントを起こしていくという意味を込めて「MOV」と名付けられた。

  • テーブル席やソファー席、公園のようなベンチを配置し、居心地の良い場所を自由に選ぶことができる。無線LANは無料で利用できる。

  • ミーティングルームは全部で9部屋。定員は6名~24名と様々だ。1時間単位から利用でき、モニターやプロジェクターが設置されておりTV会議も可能だ。

  • 専用ロッカー付きのシェアテーブルで、落ち着いて作業することができる。ここをはじめ、レジデンスエリアは24時間の利用が可能。

  • 階段を上がったテラス状の場所。小さなチームの共同作業によく使われている。

利用者のコラボレーションを誘発する
空間と仕組みのデザイン

施設内にはクリエイティビティやコラボレーションを活性化するための仕掛けが数多くある。オープンラウンジにある「Idea KIOSK(アイデアキオスク)」には雑誌・書籍を集めたライブラリや、コミュニケーションを活性化するためのゲーム、グッズが入っている。

その隣にある長いベンチの壁面にはMOVを映像で盛り上げる「Connective Window(コネクティブウィンドウ)」があり、クリエイターの映像作品やMOVのコンセプトが配信されている。

ラウンジの中央にある「10Pit(テンピット)」は、資料作成や情報収集を行うためのブース形式のこもり部屋で、周囲の視線を気にすることなく集中できるようになっている。また、オープンラウンジを見渡すようにテラスのような形状になっている場所「Dialogue Terrace(ダイアログテラス)」は、小さなチームでの共同作業によく使われている。

また、時間単位で貸し出しする会議室「Session Rooms(セッションルームズ)」は、6名から24名まで収容可能で、アイデアの発散収束や海外とのプレゼンテーション、セミナーや動画配信などに利用されている。

MOVが目指しているのは、業種や職種、世代、国境といった垣根を越えて、有機的なコミュニティを作り出すこと。刺激やアイデアを生み出し、新しいビジネスを育むプラットフォームとして期待されている。

WORKSIGHT 03(2012.11)より

MOVのエントランスゾーンにある「Show case aiiima(ショーケース アイーーーマ)」は、会員以外の一般来場者も自由に出入りできるショーケースだ。「合間」をコンセプトに、スケッチとプロダクトの合間、アイデアとビジネスの間、個人と組織の間など、多様なコンテンツを約2週間ごとに展示している。単なる展示に終わらず、MOVのラウンジでのトークショーやワークショップが企画されることも多く、新たな出会いやイノベーションの機会を生み出している。

 

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