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企業とフリーのクリエイターが同居する異業種コラボレーションスペース

オープンソースが組織を越えたコラボレーションを生む

[KREI open source studio]港区, 東京, 日本

KREI open source studio(以下、KREI)ができて2012年4月で2年が経過した。

東京・西麻布にあるこのクリエイティブセンターは、シェアオフィス「co-lab creative」を手がける春蒔(はるまき)プロジェクトと連携し、コクヨのクリエイターとさまざまな異業種クリエイターが同居する複合的な施設だ。企業とフリーランスがゆるやかにコラボするオープンイノベーションの拠点として開設されたKREIだが、この2年の間に着実にコミュニティが作られている。

そもそもKREIが作られた背景にあるのは、メーカー企業としてのコクヨの問題意識だ。

外部との接触がクリエーションの質と頻度を上げる

新しい商品開発が求められる一方で、開発部門はどうしても社内に閉じこもりがちになる。セキュリティが重要な時代であるし、知財問題も絡んで、社外に対してオープンにしづらいのだ。新製品リークの話であったり、競合関係の話であったり、そうした情報漏洩に配慮するうちに、どんどんクローズになっていく。しかし、それで本当にものづくりができるのか、プロダクトデザイナーが壁を感じていた。

いいクリエーションが起こるのは、従来は結びつきがないと思われたものごとが結合したり、影響しあうときだ。そう考えたとき、自分ではコントロールしきれていないある種の情報が否応なく流れて、何らかの触媒を通じ、別のアイデアと結びつくような化学反応が誘発されるべきではないか。社内に閉じこもるのではなく、外と積極的に関わることで、クリエーションの質・頻度を上げられると考えた。

一方で、ここ何年もの間、サテライトオフィスや、デザインセンター、アドバンス開発のための拠点が、大手企業によって数多く作られてきた。しかし、成功している例は少ない。その原因は、結局、場所を本社の外に移しただけで、施設の中にはパートナーしか入れず、オープンになっていないことにある。

西麻布の閑静な住宅街にあるKREI。制作にうってつけの場所だ。KREIとはエスペラント語で「創造する」の意。専属コンシェルジュが駐在しているのも特徴だ。

1階部分はコクヨグループ・クリエイティブセンターのオフィスになっている。使う人が手を加えられる余地を残すため、シンプルな作りにしている。

  • 2011年にロンドン芸術大学、博報堂、コクヨRDIセンターで共催された「eden」のエキシビション。3社が行ったワークショップの成果を展示した。

  • 著名なクリエイターによる講演会や、大学と企業が連携するワークショップなどのイベントは頻繁に行われている。多いときは週に1~2回あるという。

  • パーティションを広げると大空間を分節して使用することができ、すべて折り畳めばコンパクトな個室となる。

常時そこに集まる「住人」を介して
クリエイターを巻き込んでいく

KREIを作るにあたっては、まず、クリエイターの多い青山・西麻布のエリアを選んだ。デザイン室のメンバーがそこに移り、そのうえで、シェアオフィスの運営ノウハウのあるco-lab creativeと協働し、個人のクリエイターたちが施設に出入りできるしくみを作った。コクヨのデザイン室が1階に入り、2階にはブース貸しスタイルでco-lab creativeが入る。

さらに、地下1階はフリーアドレスで、フレキシブルな利用を求めるクリエイターたちが入る。この3つのエリアがガラス張りのオフィス、オープンな階段でつながり、日常的にゆるやかに接する。階段部分に作られたピンナップボードで情報を発信し合ったり、立ち話をしたりと、組織を超えたコミュニケーションが起こる工夫を徹底した。

2階のco-lab creativeは、長屋スタイルが特徴で、仕切り扉をできるだけ付けない。その中で自然発生的にコミュニティが作られ、共同のプロジェクトが起こったり、同居するクリエイターの普段の活動を見聞きするうちに、無意識に刺激を受けることを狙っている。

各クリエイターは個人で活動しているので、クライアントから複合的な仕事の相談を受けたり、自分の専門領域を超えた作業が含まれた案件がくると、コミュニティの中で募集することも可能。組織としてでもなく、個人としてでもなく、集合体として働くかたちだ。そして、このメンバーたちとコクヨの社員もまた、同じように連携して働く。ときにはアイデアレベルの立ち話だったり、ジョイントプロジェクトを作ったり、絶えず交流がある。

刺激やノイズ、変数の頻度を高める適度な設計

co-lab creativeの入居面接は、運営している春蒔プロジェクトが行っているが、コクヨ側からのリクエストは、「クリエイターのジャンルはできる限り重ならないようにしてほしい」というものだ。そのほうが空間内に違う刺激が増える。実際、ウェブ系、グラフィック系、インテリア系、それもハードとソフトの両面が混在し、いろいろなクリエイターが入居している。

地下1階は現在15人のフレックス利用者がいて、こちらは移動して働くことの多いライター系のクリエイターがほとんどだ。地下1階は1階と2階のメンバーも使えるライブラリにもなっているので、ここでもフランクなコミュニケーションが起こる。

KREIのユニークな点はもう一つあり、1Fも地階も、イベントや貸し会議室の相談があれば、一定の使用料をとって広く外部にも貸し出している。イベントが開催される時は、地下1階の利用者や1階のコクヨ社員たちは状況が許す限り、その隣で普段どおりに仕事をする。こうしたかたちで、刺激・ノイズの変数と頻度を高める設計がされている。

当初は、コクヨのデザイン室のメンバーも、「そんな落ち着かない環境で仕事ができるのか」と半信半疑だったという。しかし、2年が経過した今、外からの適度なノイズがある環境はむしろ自然になり、開発・デザインの仕事にプラスになっていると感じている。

WORKSIGHT 02(2012.6)より

2階はシェアオフィス。仕切り板で作業スペースが確保されている一方、扉はなく気軽にコミュニケーションをとれる。

地下にはラウンジとミーティングルーム。ラウンジにはキッチンとカウンターがあり、定期的に食事やお酒を楽しみながらコミュニケーションをとるイベントを開催。ミーティングルームは、4~8人向けのスペース3つ用意されている。

 

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