このエントリーをはてなブックマークに追加
workplace_laci_main

世界のクリーンテック企業を引き寄せる
ロサンゼルスのインキュベーター

クリーンテック企業のインキュベーションを行うNPO

[LACI]Los Angels, U.S.A.

  • ロサンゼルスの環境問題を解決したい
  • クリーンテック企業の成長過程を一気通貫してサポートできる施設を開設
  • 世界有数のクリーンテックNPOに成長

ロサンゼルスに、クリーンエネルギーなど次世代環境ビジネスの発展を目指して設立されたNPOがある。その名をLACI(Los Angels Cleantech Incubator)という。「Incubator」とある通り、LACIは、エネルギーや水の無駄遣いを削減する企業、交通インフラに関わる企業、サスティナビリティを促進する企業など、さまざまな企業のインキュベーターとして注目を集めている。

「LACIは5年前にロサンゼルス市の市長室で設立されました。製造業の盛んなロサンゼルス市ではもともと水や交通、ゴミなどの環境問題に取り組むため『クリーンテックコリドー(Cleentech Corridor)』というエリアを設け、そこにクリーンテック企業を集中させるという試みをしており、LACIの設立はその一環でのことです。と言っても運営はロサンゼルス市によるものではなく、あくまでNPO。連邦政府や市からの助成金など公的資金のほか、JPモルガンチェースなどの民間企業からの資金によって運営されています」

そう語るのはLACIの施設・オペレーション関連部門のヴァイスプレジデントを務めるベン・ステイプルトン氏(以下、ステイプルトン氏)だ。不動産関連事業での経験が豊富なステイプルトン氏は、LACIのオフィスでありインキュベーション施設でもあるLa Kretz Innovation Campus設立の立役者でもある。

将来有望なクリーンテック企業を「ポートフォリオ企業」として育成

La Kretz Innovation Campusは約60000平方フィート(およそ5600平方メートル)の広さを誇るビルで、もともとは1921年に家具の製造工場として建てられたもの。木造の屋根、壁のレンガなどのうち約 90%はそのまま残して当時の雰囲気を活かしつつ、建物の構造を強化するために50万ポンドの鉄を使って改装を施した。LACIの最大のパートナーであるLADWP(Los Angels Department of Water and Power/ロサンゼルス水道電気局)がこの建物を所有しており、LACIがLADWPとリース、プロパティマネジメントの契約を結んでいるという形である。

「ここでは現在、41の企業がLACIのポートフォリオ企業として活動しています。『ポートフォリオ企業』とはLa Kretz Innovation Campusにオフィスを構えていて、LACIが事業化支援を受けている会社のこと。資金集めやIT設備に関するお手伝いも行っていますよ。ここにいる企業のテクノロジーをいち早く市場に出していけるよう、力添えをしていきたいと思っています。LACI設立からこれまで、計60のポートフォリオ企業がここに存在しています。投資額は8000万ドルにのぼり、ロサンゼルスにおける経済効果は2億3000万ドル以上。世界に1200あるインキュベーターの中で総合評価3位にランクインしたこともあり、ここまでは非常にうまくやってきたのではないかと自負しています」(ステイプルトン氏)

La Kretz Innovation Campus外観。

創設:2011年
社員数:約20人
http://laincubator.org/

不動産関連事業をバックグランドに持つベン・ステイプルトン氏。

  • ものづくりを支えるラボ。

  • イベントスペース。ここで行われるイベントでは、さまざまな環境問題に関してあらゆる角度から話し合いがなされたり、企業同士のコラボレーションが行われたりする。

  • LADWPのショールーム。この時は製造や交通産業で働く女性を取り上げたアート作品が展示されていた。

  • 入居者同士の交流を生むキッチンスペース。

  • 非常に広大でオープンなキャンパスにあるワークスペース。

  • 受付横のラウンジスペース。クリーンなイメージを想起させる緑溢れるデザインになっている。

  • 受付エリア。明るい雰囲気で入居者や顧客を出迎える。

  • カフェラウンジ。コーヒー片手に入居者同士で親睦を深められる。

「クリーンテックといえばロサンゼルス」
と呼ばれることを目指したい

ここに拠点を置くポートフォリオ企業の顔ぶれは、多岐にわたる。自宅をソーラー発電化させるのに役立つオンラインプラットフォームを運営するPick My Solar、植物を原料にして皿やスプーンなどの食器を作るRepurpose、住宅での電気使用量をモニターするアプリを提供するChai Energy、エネルギー効率の高いプラズマ技術を持つHive Lightning、木廃材など100種類以上の生物を使って発電することのできる生物燃料発電機を作るEntradeなど、さまざまな企業がLa Kretz Innovation Campusでインキュベートされているのである。

Chai Energyの創業者でありCEOのコール・ハーシュコヴィッツ氏はこのように語っている。「4年前に会社を始めましたが、LACIとのコネクションができたのは3年ほど前だと思います。共同創設者の一人を紹介してくれたり、事業戦略についてのアドバイスをもらったり、LACIにはいろいろとサポートしてもらっています。ここロサンゼルスはいまやクリーンテックの中心地です。関連するイノベーティブな企業がたくさん集まっているのがLACIのいいところですね。素晴らしいコミュニティが築けていると思います」

加えてLACIは、世界中の企業とコミュニティを築くプログラム「Network for Global Innovation(NGIN)」を行っている。世界中のクリーンテック企業をつなぐ機関で、現在は米国や日本、ドイツ、フィンランド、イタリア、インド、中国、メキシコ、カナダなど約20カ国の企業が参加。クリーンテック企業の発展に必要な新技術や経営論だけでなく、メンターやアドバイザー、投資家などの情報も交換しあっている。

インキュベートに役立つさまざまな施設を完備

La Kretz Innovation Campusには、入居企業向けの広めのブースや個室、オープンスペースのほか、さまざまなワーキングスペースが設けられている。特に企業同士がコミュニティを築ける仕掛けが多く用意されており、それを魅力に感じて入居してきた企業は多い。会社を事業分野ごとに集めて席を配置したり、会社の枠を超えて気軽にコミュニケーションがとれるようにブレイクスペースを設けたりと、工夫が凝らされている。イベントスペースもその一つだ。125名が収容できるこのスペースでは、週に2〜3回イベントが行われている。2015年にはジョー・バイデン副大統領が参加したイベントもあったそうだ。

「トレーニングセンター」と呼ばれる場所もある。「現在LACIには毎月、10〜15の企業からインキュベーションの申し込みがあります。その中から採用される企業は全体のおよそ10分の1です」(ステイプルトン氏)。申し込みをした企業は、オフィスやイベントスペースの利用が可能になる。

また、そのほかで特徴的なのが「Advanced Prototyping Center (APC)」だ。エレクトリック・ラボやケミストリー・ラボ、ロボテック・ラボのほか溶接からワイヤレス技術、CNCマシン、3Dプリンタ、レーザーショップ、ウォータージェット、アセンブリーベイまで様々な施設を完備。Indiegogo Campaignと提携、アドバンスド・プロトタイピング・センターとして運営されている。インキュベーターでありながらプロトタイピングラボやLADWPといったユーティリティが揃った施設はとても珍しいという。企業の成長を加速させ、サービスを作り、認証を受けて公開するという流れを一気通貫して行えるのがLACIの強みである。

環境への配慮が行き届くオフィス

LACI、そして入居するポートフォリオ企業のみならず、La Kretz Innovation Campusの建物自体も、当然ながら環境とサステナビリティに配慮された設計となっている。例えば駐車場では175kwの太陽光発電が行われており、これが建物全体のマイクログリッドシステム(送電される電力に依存せず、ネットワーク化された複数の発電、蓄電設備を備え、電力の需要に合わせて電力を供給するシステム)につながっている。また、紫外線による浄水システムも完備。これは商業施設につけられたものの中では最大規模のものだという。「建物の北側に公園を作る予定になっているのですが、その公園へ水を配給するのに使用します」(ステイプルトン氏)。

さらには、駐車場の中心の通路に湿地を設けたり、ビルの北側には雨水の濾過装置を置いたりと、灌漑システムは充実。その水を利用して建物の壁を覆う約2100種の植物を育てており、非常に効率的だ。「私たちLACIとしては、ポートフォリオ企業の数をもっと増やし、いずれは100社までもっていきたいと思っています。金融といえばニューヨーク、バイオメディカルといえばボストンとよく言われますが、クリーンテックといえばロサンゼルスと呼ばれるようになりたいですね」とステイプルトン氏は言う。

インテリア設計: John Friedman Alice Kimm Architects (JKAK)
建築設計: John Friedman Alice Kimm Architects (JKAK)

text: Yuki Miyamoto
photo: Hirotaka Hashimoto

ポートフォリオ企業向けの個室も用意されている。

入居者が使用できる会議室。

屋根に太陽光発電パネルが備えられた駐車場。電気自動車用の給電設備もある。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

RECOMMENDEDおすすめ記事

TOPPAGE