このエントリーをはてなブックマークに追加
workplace_ocbc_main

「世界最強の銀行」を支える人材を育む
都心型研修施設

シンガポールを拠点とする大手銀行

[OCBC]Singapore

  • グループ全体でサポートトレーニングの需要が増えた
  • 自社ですべての研修が賄えるような施設を都心部に設置
  • 構造化された研修プログラムを全社員に提供

世界中からグローバル企業や富裕層が集まるシンガポール。金融業が発達するのは当然のことだろう。数多くの銀行がひしめく中、特に経営基盤が安定していると言われる銀行がOCBC(Oversea-Chinese Banking Corporation Limited)である。なにしろその実力は、ブルームバーグが発行している『ブルームバーグ・マーケッツ』誌の「世界最強の銀行」ランキングにおいて2010年度から2年連続で1位(2013年度は4位)に輝くほどだ。

OCBCの強固な経営基盤を支えるものはいったい何なのか。ここシンガポール都心部にあるOCBCの社員トレーニング施設「OCBC Campus」を訪れると、それはすぐにわかる。

「当社は“Employer of Choice(社員が働きたいと思う会社)”でありたいと考えており、実際、社員への研修を含む人材育成にはかなりの投資を行っています。このOCBC Campusを2013年3月に建てたのも、その思想に基づくものです。社内のさまざまな部門・分野に所属するあらゆる社員を対象に幅広く対応できる多くの研修プログラムを設けています」とOCBCのプログラム担当者は語る。

OCBCが社員に求める3つの能力を高めるための施設

OCBCでは、社員に3つの能力(Faculty)を身につけてもらうことを求めている。まず1つ目は「Banking & Finance Faculty」。銀行業務に関連した知識とスキルを、トレーニングを通じて育てる能力だ。2つ目はリーダーシップ、コミュニケーションなどさまざまな思考スキルである「Leadership & Employee Development Faculty」。そして3つ目は「Service Faculty」。顧客へのサービスを円滑に進めるための能力だ。OCBCは優れた顧客サービスによって同業他社との差別化を図っているため、これが最も重要な能力とも言える。

「当社は以前から研修に力を入れていて、自社の研修施設も持っていました。当時は別の施設のワンフロアを使っていたのですが、研修の需要が増えたために増床を検討したのです。一時は研修施設を複数に分けたり、外部の研修プログラムを活用したりという案も出ましたが、『自社で研修が行える研修施設を都心部に持とう』という結論になりました。都心に勤めるOCBCグループ社員が集まりやすく、それぞれが自由にスキルアップを図れる場所にしたいとの思いからです。ここは実は社員研修の他にも、新卒社員の採用プロセスのひとつであるロールプレイ研修や、子ども向けのチャリティ・イベント、著名人による講演会などにも使われています。そうした意味でも都心からのアクセスのよさは重要なポイントでした」

そうして誕生したOCBC Campusは、10階建ての施設。1階と2階がラウンジエリア、3階がイベントスペース、4〜9階がトレーニングルーム、10階がOCBC Campusに勤める社員のためのワークスペース、というつくりだ。デザインを担当したのは、「建築界の新星」と呼ばれ、世界各地で優れた建築物をデザインしているMinisty of Design(MOD)。OCBCのコーポレートカラーである赤を基調に、モダンなデザインのユニークな研修施設をつくり上げた。

デザインホテルのようなOCBC Campus。

創業:1932年
売上高:38億3,700万シンガポールドル
従業員数:約8,000人(2013)
https://www.ocbc.com/group/group-home.html

1階エントランスに見られるインスタレーション。時間によって表示される言葉が変化し、来訪者を楽しませる。

  • 3階のイベントスペース、通称“The Hall”。大きなオープンスペースで、120人まで収容可能。

  • 5階のトレーニングルーム。フロアには大小さまざまなトレーニングルームがあり、研修内容や参加者の人数によって使い分けることができる。

  • 10階のワークスペース。研修を担当する“Leaning & Development”という部署の社員が働く。

人材育成に力を注ぐ
“Employer of Choice”でありたい

OCBC Campusの内部を見回して気づくのは、ソファやチェアがフロアの至るところに見えることだ。これはデザインコンセプトのひとつにも含まれており、それに基づいて設置されたものだという。施設を建てる前に社員にヒアリングをしたところ、「ランチの時間や休憩時間に他の研修参加者と会話ができるよう、オープンスペースが欲しい」との意見があったのだという。10フロアのうち2フロアをラウンジスペースに割いたのも、そういう目的があってのことだ。

実際、1階と2階のラウンジは特に、ランチタイムはかなり混み合うのだという。「研修の参加者がランチタイムに外で食べたがらなくなったことには驚きました。外で買ったものを中に持ち込んで食べている人がほとんどです。同じ研修を受けている社員やここで知り合った社員との会話を楽しんでいるのだと思います」。

ガチガチの研修プログラムに社員を縛りつけるのではなく、空き時間にはこうしてコミュニケーションを楽しむ場所を提供している。このあたりも“Employer of Choice”たる所以なのだろう。社員の声を受けてテーブルの数を増やしたりもしているようで、会社としての対応のスピード、フレキシブルさも伺える。

研修内容によって選べる4タイプのトレーニングルーム

もちろん研修施設であるため、トレーニングルームの充実度は際立っている。4〜9階の6フロアに設置されたトレーニングルームは、研修内容によって適した場所を選べるよう、4つのタイプにデザインされた。

1つ目は4階の“Agora(広場)”と名付けられた空間。円形劇場などに見られる階段式の座席を採り入れている。講師と研修参加者が気軽にディスカッションをする姿が見受けられる。

2つ目は“Inside-Outside”という空間で、5階と7階に設けられている。ポイントは、そこかしこに見られる円形の大きな窓だ。どこにいても文字通り「内側であり外側」と感じられるスペース。スペースを無駄なく使う工夫であるとも考えられるだろう。講師主導の研修のために使われることが多いそうだ。

グループ全従業員の8,000人がここで自らの能力を鍛え上げる

3つ目は6階と8階に設けられた“Pod(容器)”。ユニークな形で囲まれた、まさに容器のような空間だ。ここは比較的少人数での研修が行われている。銀行の窓口を模した設備もあり、ここでは顧客と対面するフロントオフィスの社員を対象としたサービストレーニングなども行われているようだ。綿密なロールプレイが行われ、その一部始終はビデオで録画。ロールプレイ後は動画を見ながらレビューが行われるという徹底ぶりである。

4つ目は9階に広がる“Island(島)”。フロアの中にいくつかのデスクをまとめた“島”があり、ここは主にグループごとのワークショップなどに使われているようだ。

「ここはOCBCグループ全社のための施設なので、OCBC銀行単体だけでなく、子会社のGreat Eastern Insurance CompanyやBank of Singaporeなどに勤める社員も含め、グループ全従業員の約8000人がここで研修を受けられます。これらの研修は社員自らが希望して受けることもできますし、マネージャーが研修への参加を促すこともできます」。こうした手厚い研修制度、充実した研修施設を通じて徹底的に訓練された一人ひとりの社員が「世界最強の銀行」を支えているのだろう。

コンサルティング(ワークスタイル):自社
インテリア設計:Ministry of Design Pte Ltd
建築設計:DDS Contracts & interior Solutions Pte Ltd

WEB限定コンテンツ
(2014.4.16 シンガポールの同社オフィスで取材)

高級ホテルを思わせる1階のラウンジ。赤と白を基調にしたシンプルで広がりのある空間である。


写真上が4階の“Agora”、下が5階の“Inside-Outside”の丸窓。

6階の“Pod”。湾曲した壁の部屋や直線的に仕切られた部屋が見える。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

RECOMMENDEDおすすめ記事

高成長が生んだ矛盾を解き現場の意志を引き出す

[良品計画]豊島区, 東京, 日本

常識から完全に自由に。バルミューダの着想の原点とは

[寺尾玄]バルミューダ株式会社 代表取締役社長

仕事の社会的意義を説けば社員は働きがいを感じる

[駒崎弘樹]NPO法人 フローレンス 代表理事

TOPPAGE