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社会科学に基づいた知見とデータをイノベーションに活かす

デンマークのイノベーションコンサルティングファーム

[ReD Associates]Copenhagen, Denmark

  • 高い教養で差別化した独自のコンサル手法の展開
  • 歴史あるビルに書き込み自由な壁やデスクで感性を刺激
  • 世界的企業を顧客に持ちイノベーションをもたらす

企業のイノベーション戦略を得意とするコンサルティング会社、レッド・アソシエイツ。アディダス、サムスン、ペルノ・リカールといった世界的企業を顧客に持つ彼らのミッションは、いまだ顕在化していない新しいビジネスの兆しをつかむことだ。

同社のプロジェクトは、フレームワークを活用したビジネスコンサルティングとは異なり、人類学、哲学、社会学等々、高い専門性を持った社員たちのコラボレーションにより進められるのが特徴になっている。世界中の大学からリクルートされた社員は5年間に及ぶトレーニングを受け、自らのクライアントを持てるパートナー職へと育てられていく。

高い教養を武器に問題の本質に迫る

「何千冊もの本を読み、ハイデガーもリキテンシュタインも論ずることができる人間でなければここで働くことはできません。MBAなどよりはるかに高い教養レベルが必要になります」そう語るのは同社ディレクターのミッケル・B・ラスムセン氏。

プロジェクトは決まってセンスメイキングと呼ばれる5つのステップを踏む。すなわち、現場を調査して状況を理解する「フレーミング(Framing:構築)」、エスノグラフィーなどの手法でデータを収集する「データリサーチ(Data Research:調査)」、集めたデータを綿密なロジックで分類する「ホールバリュー(Whole Value:情報の価値付け)」、前工程で出たアイデアをクライアント企業でどのように活かすかを考える「ストラテジー(Strategy:戦略)」、戦略やアイデアをクライアント企業に浸透させる「アンカリング(Anchoring:定着)」だ。

彼らの独自性は最初の「フレーミング」のステップから顕著に表れている。彼らはあらゆるフィールドに対してまったく先入観のない「ビギナーズマインド」を持って臨む。これは「仮説を立ててテストする」といったMBAなどで学ぶアプローチとは真逆のものだと言える。そもそも彼らが社会科学を多く取り入れているのは「人間を科学する会社」だからだという。クライアントに人間の立ち居振る舞い(Human Behavior)をわかってもらうことが自分たちの役割。そう考える彼らにとって、先入観は人間のありのままの姿を覆い隠す邪魔なものだ。

例えば、アディダスから「ランニングシューズにおける市場シェアが落ちている」との相談を受けたとする。普通のコンサル会社であれば「なぜシェアが落ちているのか」を調査するところだが、彼らは違う。まず「この会社は今まで何をやってきたんだろう」「競合他社は何をやっているんだろう」「関係ありそうなテクノロジーは何だろう」といった切り口でデータを収集。そして得られたデータをもとに「なぜ市場シェアが落ちているんだろう」ではなく「なぜ、人間は走るのだろう」と考えていくのだ。

ReD Associates
設立: 2005年
売上高: 非公開
純利益: 非公開
社員数: 75人

歴史のある建物の中で様々な学問のエキスパートが最先端のイノベーションに取り組んでいる。建物内のワークエリアは自由に席を選択できるフリーアドレス制。チームごとに座ることが多い。
http://www.redassociates.com/

ライブラリーには経営書や社会学、デザインなど様々なジャンルの書籍が置かれている。

ミッケル・B・ラスムセン
Mikkel B. Rasmussen
パートナー/EUディレクター

マーストリヒト大学を卒業後、ロスキレ大学大学院で行政学と経済学の修士号を取得。マインドラボの設立に参画後、2005年にレッド・アソシエイツを設立。

  • 1800年代に建てられた屋敷で、絵画やタペストリなど当時の調度品を残している。

  • アイデアや資料はボードにピンナップして簡単に持ち運びできるようにしている。

  • プロジェクトルームには大きな黒板。オフィス内にはこうした小部屋がいくつもある。

  • キッチンはコミュニケーションの場になるため、カフェをイメージして作った。

顧客と積極的に交わることで
挑戦的な施策の実現可能性を高める

特に同社が力を発揮するのは「ホールバリュー」のステップだという。フィールドから持ち帰ったデータを分類し、かつフィールドで出会った人をお互いに紹介し合う。そのなかで最終的なアイデアへと繋がる「パターン」を見出していくのである。必要なのは膨大なデータに対する深い洞察力、スタッフに高い教養を求めるのも、そこに理由がある。

なおプロジェクトには顧客先の社員を必ず1人以上入れることにしている。また顧客の社内にもプロジェクトチームを作ってもらい、そのなかに必ず1人はトップマネジメントを入れる。プロジェクト全体の進行に権限を持つ人間を置くことで、紛糾しやすいチャレンジングなアイデアに関わる意思決 定を円滑に進めていくことができる。

エントランスからの様子。明暗のメリハリも趣がある。ビジネスで忘れがちな感性を刺激することが、他のコンサルティングファームとは差別化された、“ならでは”のアイデアの呼び水となる。

360°View

エントランスからの様子。明暗のメリハリも趣がある。ビジネスで忘れがちな感性を刺激することが、他のコンサルティングファームとは差別化された、“ならでは”のアイデアの呼び水となる。

※画像をタップすると360°スライド表示が見られます

歴史に囲まれた環境が交流を生み
インスピレーションを刺激

同社のオフィスは1800年代に建てられた古いビルにある。「古い建物のなかで全く新しいイノベーションを生み出すことが、コンセプト的に面白い」とラスムセン氏は考えている。

オフィス内で目を引くのは、議論を円滑に進めるためのワークショップスペースが豊富であることだ。議論しながら書き込みができる壁やデスクがスタッフのインスピレーションをかき立てる。キッチンや食堂もまた、スタッフが気軽に議論を始められるスペースになる。

「年間150日は出張に出るというスタッフのために宿泊施設を二つ用意しているのも、彼らの交流に一役買う。小さな部屋がいくつもある一方で、お互いの行動に干渉できるようオープンなワーキングスペースも用意されている。そこには自分専用のデスクはなく、仕事が終われば荷物を片付け、他の場所へと移動するのだ。

顧客を “異文化”体験に招待し多角的な思考を喚起

このオフィスは顧客に対しても刺激を与え、新たな視点やマインドを引き出すツールになっている。そのため、すべての顧客をオフィスに招く。この点も従来のビジネスコンサルティングとは間逆だ。

コンサルタントが顧客と同じ文化のなかに身を置いては、彼らと違うアイデアをもたらすことはできない。「顧客に異文化を感じさせるオフィスであり、コンサルタントであり続ける必要がある。それができるよう部屋もデザインされている」とラスムセン氏。優秀な人材もさることながら、こうした空間面の配慮も名だたる世界的企業を動かすイノベーションを創出する土壌になっている。

WORKSIGHT 04(2013.06より)

ワークショップのための部屋は、デスクや壁がすべてホワイトボードになっている。

ワークショップルームに置かれたツールボックス。アイデア出しの時などに活用される。

出張者が多いため宿泊施設を完備。ニューヨークオフィスにも同じ施設がある。

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