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新しい未来像を描くために自由な対話が行われる空間

英国BIS省の中にある対話の場

[Future Focus]City of London, London, UK

フューチャーセンターは、北欧を中心に広がっている未来のための対話スペースだ。その多くが独立した施設と組織を持っていることから、空間を指す場合とアクティビティを指す場合がある。

日本でも、多くの組織が対話の場として注目しはじめている。その設置目的は、組織の変化を助けることにある。組織は時間の経過と共に自分達で作った仕組みに縛られて、社会あるいは関係者のニーズとの間のギャップを埋められなくなる。そこで、関係者との対話を通じて相手の考えを深く理解し、将来に向けた共通の答え、変化の方向性を見つける場として、フューチャーセンターが設置される。

行政や企業組織が自組織のために設置する場合と、大学や自治体などが他の組織のために場を提供する場合がある。また、組織内の変革に目的を置き各部門メンバーを関係者と置く場合と、組織の方向性を探るために組織外のステークホルダーを関係者と置く場合があり、目的はそれぞれに設定されるものといえる。

設置主体と目的が異なるにもかかわらずフューチャーセンターと呼ばれているのは、共通するアクティビティが多いためだ。自由な対話のための空間が用意され、対話を促進するファシリテーターが進行を務める。これにより、共通して期待する未来が描き出される。

たとえば、イギリスのフューチャーフォーカスがその一例だ。フューチャーフォーカスは、イギリスビジネス・企業・規制改革省、大学・革新・技能省、児童・学校・家族省の複数省庁が連携して設立された。複数省庁にまたがる問題や企業のビジネス上の課題を解決するためのファシリテーションを行うことを目的としている。

イマーシブシアターで映像を使って未来志向のための場であることを共有することから、ワークショップが始まり、小さなグループに分かれてのワーク、ITツールを使ったブレインストーミングなど、持ち込まれた課題に応じて利用者とファシリテーターが場を活かしたプログラムを組み、課題解決が行われる。

そのほか、フューチャーフォーカスには、未来について話し合うための設備が充実しているのが特徴だ。その一端を紹介していく。

ビジネス・イノベーション&スキルズ省の中に設置されたフューチャーフォーカスの入り口。壁に飾られたタイルは、未来のイメージを描いたもの。

エントランスは、宇宙船の入り口のようなつくり。来場者に未来視点にスイッチングしてもらうために、非日常を感じさせるデザインにしたという。

01 官公街にある開かれた対話の場

フューチャーフォーカスは、BIS省の1Fエントランス横に設置され、省庁間の横断的ディスカッションや民間を交えたワークショップなどに利用されている。イギリスではビジネス創出のために官民が一緒に未来を考える場づくりが重視されるため、民間からの持ち込みイベントも多く、現在は年間380のイベントが動いているという。

02 参加者で共有する未来映像

未来視点を得るためのシアター。未来の変化について、独自に作成したコンテンツを流している。ネット上にあるさまざまなコンテンツを組み合わせながら、クライアントのテーマに合わせてフレキシブルに対応できるのが最大の特徴。また、来訪者に未来を考えるモードに入ってもらうために、未来に対するブリーフィングを行うこともある。シアターは外のスペースと隔離されているため、従来の考え方を切り替える雰囲気を作り出しやすい。

03 デジタルを駆使したコラボレーションの空間

ICTメーカーと連携してつくったフレキシブルスペース。最新テクノロジーのショーケース的意味合いもある。2カ所に分けて同時にプレゼンテーションを行うことができ、それぞれ中心にはスマートボードが置いてある。この部屋の特徴は用途が自由であること。プレゼンテーションの後に、グループに分割して映像を見て、ディスカッションを深めるなど、他の部屋と比べるとフレキシビリティは高い。壁に配置されたグラフィックが明るい雰囲気を演出している。

04 右脳を刺激するホワイトボードの空間

通称クリエイティブ・ラボ。20台のPCが設置されており、シンクタンクという汎用ソフトウエアを使って、ネット上でつながりながらコラボレーションすることが可能。20人が同時にアイデアを出し、リアルタイムに優先順位をつけてアイデアを集束できる。アイデアには匿名性があることも重要で、この部屋ではヒエラルキーはなく、さまざまな意見を編集することができる。このシステムを使うと、アイデアの量が2倍くらいに増えるそうだ。

05 ファシリテーションに合わせた場の選択肢

左に見えるのがブレイクアウトルーム。この部屋ではデジタル機器は一切使わず、フェイス・トゥ・フェイスで円陣になって対話を深める。ホワイトボードや付箋などが用意してあり、参加者全員が参画して議論を進めていく。手前は3~5人の小さなユニット用のスペース。コラボレーションスペースのほとんどに扉がなく、空間はゆるやかに連携している。ただし、椅子の座面の高さが違うなど、細かい点で視線の配慮や雰囲気の違いを演出している。

06 フューチャーフォーカスを運営するバックオフィス

フューチャーフォーカスは年間380もあるイベントを2名の職員で運営している。常駐しているディレクターはビジネス・イノベーション&スキルズの職員であり、フューチャーセッションのデザイン、個別のファシリテーションから場のマネジメントまで行う。ただし、フューチャーセンターの要ともなるファシリテーションには必要に応じて外部スタッフとも連携している。未来がどうなるか、どうありたいかという問題の本質を捉えることが最も重要であり、事前の準備やディスカッションに多くの時間を割いている。

WORKSIGHT 01(2011.10)より

 

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事業戦略と施設戦略を統合するコンストラクションマネジメント

[川原秀仁]株式会社山下ピー・エム・コンサルタンツ 代表取締役社長

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